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特別取材

日本港湾の浮沈をかけた、博多港エコターミナル・プロジェクト(後)
特別取材
2011年4月11日 07:00

<コンテナ温度を保ち消費電力削減>

 アイランドシティCTには、もうひとつのECO技術「省電力リーファー設備」の検証も行なわれている。
 冷凍・冷蔵の必要がある食料などを保管するため、電力を消費して、内部を一定温度に保つのが従来のリーファー・コンテナ。そのうえに可動式の屋根を設置し、直射日光を遮断、コンテナの表面温度の上昇を抑えるのが「省電力リーファー設備」である。
 この可動式屋根は、香椎パークポートCTとアイランドシティCTの管理システム「KACCS」によって、自動で開放できる。屋根の開閉パターンは3種類あり、荷役作業の支障とならないようにしている。

<世界唯一のハイブリッド・キャリア>

 一方、香椎パークポートCTでも、世界初の試みが行なわれている。それはハイブリッドシステムを搭載したストラドルキャリアの実証実験だ。このキャリアは、世界広しといえども稼動しているのは博多港にある1台のみである。
 ハイブリッドシステムとは、巻き上げたコンテナを下ろす際に発生する電力を、電池に蓄電し、巻き上げの際にモーターに電力供給しアシストするという仕組み。同キャリアの下部側面には、制御機器と電池を蔵したハイブリッド盤がある。
 こちらもRTGと同様、従来のキャリアと運転方法に大きな違いがなく、運用面での問題は今のところ見つかっていない。

<結果が待たれる実証実験>

ハイブリッド・ストラドルキャリア 博多港におけるCTのECO戦略の長所は、まず、荷役機械の動力源を軽油燃料から外部電力に転換することで、エネルギーコストを半分近く削減できる点にある。同時に、CO2排出量削減という時代の要請に応えることもできる。エネルギーコストの削減は、ターミナルコストの削減にもつながり、日本港湾の国際競争力を高めるうえでは、喫緊の課題だ。
 また、これまで述べてきた通り、従来の荷役機械と運用面においてはほとんど変更点がないことから、設備投資コストをクリアできれば、国内他港においても速やかに導入が進むはずだ。アイランドシティCTでは、10年4月の着工から実用までかかった期間は約9カ月。その間も効率的な施工管理を行ない、ターミナルの運用に影響は出なかったとしている。
 実証実験の結果次第では、ほかの日本の港湾でも電動化プロジェクトは積極的に導入され、その結果、大幅なコストの削減が達成できる。国家経済に大きく貢献する世界最先端技術、その実証実験を行なっている博多港の役割は非常に大きい。

(了)

【山下 康太】


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