<アジアには技術はあれども売り場がない>
ネイルケア用品の爪磨きに、かわいらしいデザインを施すことで、独自のブランドとして売り出す、地場雑貨メーカー・アリーナ。社長の津野孝氏は失業中に出会った、アジア各国とのビジネスマッチングがビジネスのターニングポイントになったという。
アリーナ社長の津野氏は2004年冬、失業中だった。これまで日用雑貨のメーカーに勤めていたこともあり、漠然と、オリジナル雑貨を作って流通に乗せて売ろうと考えていたという。大手メーカーの商材を請け負って商売するより、オリジナル商材を手がけたい、そんなことを考えながら、半年ぐらいかけて、日本中のあらゆるビジネス商談会に参加していた。そして、とある展示会で出会ったのが、「爪磨き」だった。
ただ、爪磨きグッズはこれまでにもあり、ドラッグストア業界やネイル業界に簡単に参入できないようにするには、自らの得意分野にする必要がある。そこで、爪磨きにかわいらしいプリントをして、日用雑貨にして売ろうと考えたという。それが、現在のアリーナの主力商品「キュピカ」の生まれたきっかけだという。
当時、津野氏は単なる個人事業主。アイデアは生まれても開発してくれる企業は、国内にはなかった。すると、あるコネクションがきっかけで、台湾の企業が関心を示してくれた。しかし、台湾の企業とは思うような試作品はできなかった。その後、韓国の工場が手を挙げてくれた。その会社はインクのなかに研磨剤を入れるという特殊なプリント技術で特許を持つ会社だった。この技術を使えば、爪磨きの機能を劣化させることなく、表面にプリントすることができる、津野氏は確信したという。
彼らもヨーロッパやアメリカ向けには爪磨きを作っていたが、その技術を有効に活用することはできていなかった。そこで、津野氏がネイルケア用品として売るよりも、雑貨として日本で売ってみてはどうかと提案した。彼らもマーケットに広がりができることもあり、同意にこぎつけた。アジアには技術はあれども、売り場がない企業は多い。それに、会社の大きさは関係ない。個人でもアイデアと情熱があれば、日本の企業よりも、ビジネスマッチングにつながる可能性は高い。その後、会社を法人化し、韓国の工場と独占販売権を得た。津野氏が失業してから、ちょうど1年が経ったころだった。
【杉本 尚大】
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