福岡県暴力団排除条例の施行後ますます厳しくなる暴力団排除の流れ。主な内容は、下記のとおりだが、実務に携わる各業者はいつ降りかかるとも分からない火の粉を振り払うのに躍起だ。
不動産業界も同様で、毎年転居が多くなるこの時期には、借主が暴力団でないことや暴力団事務所に使用しないことなどを盛り込んだ誓約書へのサインを求めている。業界全体では相当前から誓約書のフォーマットを用いていたとのことだが、とくに福岡県では先の条例の影響もあり念入りな説明が行なわれているようだ。営業職員レベルでは「暴力団の友人を部屋に入れただけでも賃貸借契約を解除されることがあります」とまで説明しており、これには筆者も「暴力団対策もここまで来たか」と強く感じた。
ただ、少々乱暴な説明であるようにも思われる。一般に、借家の賃貸借契約は、居住者の生活の基盤となるだけに借主保護の要請が強く働く。そのため、契約書に書かれた解除理由が生じただけでは足りず、さらに貸主と借主の信頼関係が破壊されたという状況が生じて初めて解除をなしうる状態となる。「暴力団の友人を部屋に入れただけ」の状態では、「借主が暴力団員ではない」ことや「暴力団事務所に使用しない」という取り決めを犯しておらず、より積極的な事情なしには信頼関係の破壊も解除権の発生に至らない程度となるだろう。制度施行後間もないことから混乱もあろうが、将来的に貸主・借主双方に迷惑を掛けないような丁寧な説明が望まれる。
とはいえ、過去には信頼関係破壊の根拠のひとつに借主が暴力団員であることを挙げた裁判例もある。今後、上記のような暴力団排除条項が契約書内に盛り込まれることで、暴力団絡みの契約解除が裁判上スムーズに認められる流れが作られていくものと予想される。
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