福岡土木(株)
<民間工事で鍛えられた企業は強い>
以前、松本組(福岡市東区)の松本優三社長が指摘したことを鮮明に記憶している。「九州総合建設(福岡市東区)さんは民間およびゼネコンの工事で鍛えられてきたため、コスト管理に定評がある。あそこまで原価管理を貫徹できない。我々が粗利15%を確保して九州総合建設さんに発注したとする。それでもなお15%の利益を捻出する蓄積がある。こういう会社が官公庁の工事を直接受注するようになれば、驚異的なライバルになるであろう」と語ってくれたことだ。
この九州総合建設と同様の道を歩もうとしているのが、東区に本社がある福岡土木(株)だ。同社の香月壮介社長は土木・建設会社に勤務した後、福岡に帰省して1983年10月に会社をおこした。受注対象は竹中工務店、イチケンなどが主力であった。一部、梅の花、ロイヤルなどの民間ダイレクト工事も確保してきた。ピーク時は完工高10億円をしのぐ勢いを持つ時期もあった。
会社設立から12、3年間は竹中工務店を含むスーパーゼネコンも下請け業者の面倒をみる余裕があった。たしかにこの期間は下請けでも儲かっていた。同社も潤っていたことは事実だ。95年を境にして『元請け・下請け』の共存共栄の成立の基盤が崩壊していった。竹中工務店の下請け会を『竹和会』と呼ぶ。この会に所属していても「企業存続が危うい」と離脱していった仲間たちもいる。香月社長は下記の通り決断を下した。「会社の存続を他人様に頼っていたら駄目だ。自前のパワーで生きていくしかない。そのためには官公庁受注に方向転換するしかない」―― 2年前のことである。
<血反吐を吐く苦しみのリストラ断行>
それまでの香月社長の経営方針の柱は「社員、従業員すべて家族のごとく助け合って生きていく。経営者たる者の最大の使命は雇用を守っていくこと」であった。会社を起こして25年間、経営上の都合で首を切ったことは一度もない。だからこそ20名を超えていた従業員を3分の1にすることを断行するにあたって、香月社長は眠れない日が続いた。「従業員の首を切ってまで会社を防衛することは正しいことか」と自問自答を繰り返した。
「やはり企業存続を優先すべし」との結論に達すると、再就職先の斡旋やできるだけの退職待遇を図った。現在6名体制に縮小して経費の見直しを徹底した。売上を3分の1に落としても利益を出せる強い組織づくりが完成したのである。現在は福岡市を筆頭に、官公庁受注のアタックに注力している。過去において業界の貸し借りの関係が無かったことがプラスになっている。フリーに活動できるのだ。また、測量~コスト低減施工図作成・施工に特色を活かし、堅実な経営を行なっている。
香月雄一専務が振り返る。「やはり企業の体質改善は即断即効でやることを学びました。資金繰りに追われて後手後手の対策では企業は終わります。何事も多少の余裕があるときに企業変革の策を打つことが大切です。今後も先手必勝の永続改革を進めます」。この経営手法を貫徹している同社に期待できる。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:香月 壮介
所在地:福岡市東区和白3-371-1
設 立:1983年10月
資本金:3,000万円
T E L:092-607-2355
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