「お待たせしました。債権者集会を再開します」
10分後、裁判官がそう宣言し、集会は再開された。
「それでは集計結果を発表します」
裁判官の声を受け、書記官が人数および金額で集計結果を発表した。約80名の債権者の中で2名の反対者がいたものの、主だった銀行などはすべて賛成に回っていただき、議決権額では99%の賛成率となった。民事再生法の再生計画案の認可基準は、議決権額基準は総額の2分の1以上、頭数基準では書面投票を含む出席者の過半数ということなので、再生計画案は可決された。つづいて裁判官は、再生計画の認可について、議場に意見を募った。
「以上のとおり再生計画案は可決されました。再生計画案の認可について意見はありませんか?」
特に意見は出なかった。
「それではとくに意見もないようですので、再生計画を認可することとします」
時間にして約30分、最後のヤマ場である債権者集会は、事前に票固めを期したこともあって、あっけなく終わった。再生計画が認可されると、その内容に沿って再生債権額の95%が正式に免責されることとなった。
その日の夜は残った役員で久しぶりの祝杯を挙げた。
再生計画が認可されたところで、債権者に迷惑をかけた事実が贖罪されるわけではない。また再生計画案が認可されずに破産手続きに移行したところで、先に事業譲渡を達成してしまった当社としては経済的には大した違いはなかった。しかし、認可されずに破産手続きに移行するのと、まがりなりに債権者が賛成して認可されるのでは、私たちの気持ちは大きく違った。
これにより、当社は10月16日に正式に免責され、11月末日まで再生債権額の約5%を弁済することで再生手続が終結する見込みとなった。その後、各債権者には再生計画案に賛成いただいたお礼と弁済金の振込先の確認を兼ねた文書を発送した。5万円超を放棄することにより5万円の弁済を受けたい人には、その分の債権放棄合意書も提出いただいた。
〔登場者名はすべて仮称〕
(つづく)
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