博多港開発(株) 取締役社長 中島 紹男 氏
博多湾の一角に悠然と浮かぶアイランドシティ(以下、IC)。このICの開発をめぐっては、これまでさまざまな議論があった。ICの開発に深く関わり、その発展に尽力する博多港開発㈱取締役社長の中島紹男氏に、ICそして博多港のこれからのあり方について話を聞いた。
<独自のまちづくり目指す>
―ICと言えば、こども病院移転問題で揺れています。
中島 新産業という観点から言いますと、福岡は3つの研究開発型産業の拠点ができると言われています。1つ目は百道のソフトリサーチパークを中心とした情報系で、2つ目は産学連携交流センターを拠点に、大学の研究成果を活用した企業などの研究開発機能が集積することによる九州大学学術研究都市づくりです。そして3つ目が、ICの1つの大きな目標である「健康未来都市」です。健康・医療・福祉に関する産業を創出していくという拠点性を意識したまちづくりができれば、よりICの特色が出てくると思います。
こども病院については、現在、市の調査委員会において検証が行なわれていますが、「健康未来都市」の中核的な役割を果たす施設ですので、これからもしっかりと推移を見守っていきたいですね。
―ほかに、どのような医療関係の立地が考えられますか。
中島 すでに医療法人社団杏林会の「杉岡記念病院」がありますが、ここは股関節・膝関節外科の専門病院で優れたスタッフを揃えた特色ある病院です。また福祉に関しては、社会福祉法人怡土福祉会の特別養護老人ホーム「アイランドシティ照葉」があります。少しずつですが、こうした施設がまとまることで有機的に連携できるまちになると思います。そうしたところに研究開発型の企業を誘致していけば、より相乗的な効果が期待できます。
アジアのなかでも、高齢化に関する分野では日本は非常に進んでいます。ICでも、高齢者が安心して暮らせるまちづくりに取り組んでおり、アジアの高齢化問題の解決に寄与することを目指して策定された「アジア高齢社会プラットフォーム構想」の推進のため、NPO法人やこれらの医療・福祉関連施設などが連携し、日本の先進的な介護などを学ぶために海外から視察に訪れる方々の受け入れなどを行なっているということです。
博多の寺社町、天神の商業街、百道の情報センター、太宰府の歴史施設などと連携はしつつも違うかたちで、とくに環境、医療、福祉を中心としたまちづくりをしていけば、ICからも新しい観光のあり方を打ち出せると思います。
―たとえば津田たかしさんが、県立美術館や市民会館を建て替えと同時に移転してはどうか、とおっしゃっていました。
中島 我々としてどの施設が、と言える立場ではございませんが、私個人としては約200haのまちには文化的な施設、人を惹きつける施設が必要だと思います。「シーサイドももち」にも博物館、図書館があり、地行浜にはドームやショッピングモールがあります。やはり人の潤いというか、良い意味での文化的・知的刺激を満たしてくれるような施設が必要でしょう。そのなかで居住環境の良い住居などが相まって、活気ある、魅力あるまちになっていくでしょう。
現在、住まわれている方々にもそうした期待感があると思います。直接的、間接的に聞いた話では、本当に住環境としては良いという評価をいただいております。そのなかで文化的、商業的な機能を充実してほしいという声もあります。
<プロフィール>
中島 紹男(なかしま・つぎお)
1949年生まれ。73年中央大学卒業後、福岡市に入庁。92年(財)アジア太平洋センター事務局長、99年総務企画局人事部長、05年港湾局長、09年㈶福岡コンベンションセンター理事長を経て、10年6月博多港開発(株)取締役社長に就任。
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