―財政健全化の道筋をつけることができた要因はなんですか。
山崎 それまで積極的に行なわれた開発行政を見直して整理し、今風に言えば"メタボ"だった体質を改善する方向性ができたということでしょうか。しかし、そこで重要なのは、体質を改善してどうするか、ということです。福岡市を離れた後、オリンピック誘致の話などがありましたが、その後、あまり福岡の話を聞くことがなくなり、気になっていました。そういうところが"発信力"ではないでしょうか。
―アイランドシティ(人工島)についても、夢や理想はさておき、「とにかく土地を売却しないといかん」となっていましたね。
山崎 福岡市に製造者責任がある以上、きっちりとしたものを顧客に提供していくという意味で、そういう作業は必要であり、今までやってこられたことだろうと思います。そこで「売るだけではダメだ」というお話ですね。
―ええ。富山大学の伊東順二教授が、「福岡は潜在的な魅力を活かしきれていない」とご指摘されていました。
山崎 伊東先生のご出身は長崎でしたね。私もどちらかというと地方の出身ですが、6年前に福岡市役所に勤めていた当時から市職員に、「福岡は素材が恵まれすぎていて、よその地域からすればうらやましい。こういう所で仕事ができる皆さんは幸せなんですよ」と言っていました。
―財政健全化の道筋がついたとなれば、今後は投資を考えていく局面に切り替えなければならない時期にあるかと思いますが。
山崎 ハード面への過去の投資が終わったため、財政健全化、象徴的には市債残高の削減につながっているということもあります。その投資の効果、果実としてまちづくりに活かしていく時期にあると思います。いわゆるハード面の部局では今、使い道を考えてどう投資をしていくか、というところにウェイトが置かれているという印象があります。
現在、単純に公共工事を発注するというのではなく、どういうまちづくりをしていくのかということを考えないと、仕事が進まないようになってきています。ある程度、基幹的なインフラが整備されたので、これからのまちづくりはそれを活かしつつ、後はどこを整備していけば、高島市長がおっしゃる「アジアのリーダー都市」になるのか。そこは、福岡市の優秀な技術職員が真価を問われるところで、腕の見せ所だろうと思います。
そこで一番重要なのが、私の言葉で言う「ストーリー作り」です。中身はいっぱいあるわけですから、まずはそこに気づくこと。そして、その恵まれた素材を使ってどのようにまちづくりをしていくかというストーリーを作り、それをどのように市民や世界に発信していくか、というところが重要だと思います。
【文・構成:山下 康太】
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