―高島市長が、九州新幹線開通に際し、熊本市長と鹿児島市長と三人で関西へPRに行ったときの話です。福岡にはいろいろとありすぎて何を宣伝したらいいか困惑した、と率直に語っておられました。
山崎 ありすぎて語れないわけですね。日本全国で言うと、語るものがないところも多く、そういう自治体の職員はいつも悪戦苦闘しています。その点、熊本や鹿児島は恵まれていると思います。しかし、福岡に至っては、ありすぎてどれを語ればいいのかわからないという状況ではないでしょうか。贅沢すぎる話ですが、そこをまず市職員も認識し直す。その意味で、高島市長の広報戦略は良いチャンスなのではないかと思います。
その点、京都はある意味、「ストーリー作り」の名人です。昨年(2010年)に亡くなられた京都大学名誉教授の梅棹忠夫先生は、京都は「観光都市」ではなく「祝祭都市」だとおっしゃっておられました。京都の場合、何にもないところにストーリーを作っていくことが得意でして、そのストーリーを実際に展開していく仕掛けを作っていきます。その結果としてお客さんが来る、それが"観光"になっているのです。惹きつけるものがあって、そこに人を集める、それが広報戦略ではないかと思います。
―京都市の行政は、そのなかでどういう役割を担っていたんですか。
山崎 実は、京都と福岡は非常に似ているところがあって、それは町衆の力が充実しているということです。ある意味、行政は町衆に迷惑をかけずに舵取りをするのが仕事というところがありました。京都では、ストーリーを市役所が作るのではなく、民間―たとえば大学や寺社、町衆の力が強い商店街などが作ります。京都の「ストーリー作り」はよく勉強したほうがいいですね。
―最後に、今考えられる「ストーリー」のなかで、どういったものが福岡市の発展を牽引していくと思われますか。
山崎 私はソフト面、産業振興といったところが所管になりますが、これからの社会は、重工場大産業から知識産業へ移行していきます。私が勉強した限りでは、そのようななかで発展している地域「メガ・リージョン」は世界で50くらいあり、日本では東京、関西、名古屋が「スーパー・メガ・リージョン」、それ以外に札幌と福岡があげられます。「スパイキー」と言われるそれらの尖った地域が今後生き残り、同時に他の地域を牽引していくと言われています。私は高島市長に、まず「尖った市長」になって欲しいと思います。それが「リーダー都市」になることではないでしょうか。
【文・構成:山下 康太】
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