「出産を繰り返した廃用牛だからユッケ向けではなかったとか、様々な報道が出ていますが、卸業者にしても飲食店にしても肉を適切に扱っていたかどうかが一番の問題だと思います」(食肉卸業者)。たとえば肉を輸送する際、宅配業者のチルド車で配送されているが、都心部においては、他の荷物と一緒に台車に載せられて運ばれるケースが多いという。寒い冬はまだしも、春先は気温が高くなるから注意が必要であり、気温の高い夏はもってのほかだ。
「宅配業者に聞くと、チルド車は温度管理がなされているから安全だとか言ってますが、ドアを開けただけで3~5度位は温度が上がるんです。ましてや台車に載せられて10軒得意先を回り、最後の1件目にユッケ用の生肉を持ってこられたら、何分間台車の上に放置されていると思いますか?これはかなり危険なんですよ」と食肉卸業者らは警告する。
前回登場したAさんの卸会社ではユッケ用の生肉は車の駐停車の手間が面倒であっても、専用の保冷車で1軒1軒店の前に停めて配達しているという。「このような食中毒事件が起こる前からわれわれは管理を徹底していました。福岡県もO‐157事件後、条例で厳しく管理していましたし、卸業者、焼肉店関係なく肉を扱うプロならば、肉に惚れ込んで勉強しないといかんですよ」とAさん。
さらに、「要は食肉をはじめ、処理、配送などの手間をかけた安全なものであれば、高いんです。食中毒事故の起きたユッケの金額はありえない数字です(280円)。相場は倍以上ですよ」と続けた。適切な処置と管理をすれば、それなりの価格になること、安いものにはそれなりの安い理由があることをイメージしなければならない時代になったのかもしれない。
【流通取材班】
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