15日、福岡市役所で行なわれた「こども病院移転計画調査委員会」の第7回は、「平成19年度に検討・検証が行なわれた移転計画」(19年度計画)について市のガバナンス(仕事の進め方)の問題性を指摘するといった検証結果を高島宗一郎福岡市長へ報告した。一般市民に開放された会場はほぼ満席となり、インターネットの生中継では総視聴者数が終了時に17,000を超えるなど、市民の関心の高さがうかがえた。
同調査委は、高島市長の選挙公約であった「福岡市立こども病院の人工島移転計画の見直し」に基づいて設置。委員長を元三重県知事の北川正恭 早稲田大学大学院教授が務めた。委員には、法曹関係、都市計画、建築、医療などの各専門家に加え、市内の医療関係者、こども病院患者家族の会代表、公募・抽選で選ばれた2名の市民委員ら10名。
なお、委員のなかには、東日本大震災で被災した宮城県立こども病院の林 富(ゆたか)院長がおり、震災発生後に開かれた同調査委で、被災地医療施設の被災状況を説明し、震災への備えも重要な要素であることを訴えた。
検証報告では、平成19年度から20年度にかけて、こども病院のアイランドシティ移転を決定したプロセスの合理性・妥当性については両論併記となった。ただし、根拠とするゼネコンからの聞き取りメモを紛失した状態で現地建て替え費用を1.5倍増しの試算で公表した件(1.5倍問題)については不適切と意見が一致していた。
また、同調査委では、市の意思決定プロセスの問題性も浮かびあがった。移転候補地のひとつである九州大学六本松キャンパス跡地について、市側は、当初、デメリットとして土地単価などコスト面を強調したが、第7回に至って、裁判所移転のため区画をふたつに分ける道路ができるなど用途が決まっていることを説明。北川委員長は「意思決定がタテ割りで、全体的なビジョンが見えないことが現在の混乱を招いた」との指摘をした。
「19年度計画」の検証に伴い、同調査委では「交通・立地」「医療の質」「経済性」「災害対策」などの観点から総合的評価を行なう手法で、複数の候補地を比較・検討した。報告では、現地建て替えのほか、新築移転となる九州大学六本松キャンパス跡地(中央区)、当仁中学校跡地(城南区)、香椎副都心土地区画整理地区(東区)、アイランドシティ(東区)、九州大学箱崎キャンパス跡地(東区)について総論表記となった。
同調査委の報告を受け取った高島市長は、1.5倍問題の問題性を認めたうえで「透明性をもった議論、説明責任を果たしていく福岡市役所に生まれ変わる。二度と問題を起こさない」との決意を語った。
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