中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
中国の5月は結婚ラッシュだ。気候も良くなり雨もほとんど降らないので毎日のように花嫁、花婿姿を見かける。結婚式の朝、花婿は花嫁の自宅まで飾り立てた車で迎えに行き、自分の家まで花嫁を連れてきて近所の人にお披露目をする。ドラや太鼓の音で集まった普段着の人々から祝福を受け、結婚式場に向かうという。純白のウエディングドレスを着たままの花嫁は、古くてあまり清潔でない新郎の家であっても、その玄関をくぐらなければならない風習なのだ。
中国でも日本と同様、都市部では晩婚化が進み、花嫁の平均年齢は29歳ほどになっているという。これは中国政府のひとりっ子政策にも関係してくるのだが、「ゆっくり相手を見極めて、子供はひとり」という概念は浸透しつつあるようだ。その一方で、90年代まで残っていた「婚前のセックスは禁止」の概念はほとんど消えてしまっているという。
そのためか、「できちゃった婚」も増えているという。結婚適齢期を迎えた「計画出産政策世代」いわゆる「80後世代」の人口は女性より男性が2割も多く、肉食系女子が家庭にやさしい草食系男子を選ぶ時代になってきた。
経済成長を背景に「高学歴、高収入、家と車が買える人」、しかも「子供のめんどうも見てくれる人」を冷静に選び出し、「有無を言わせぬ妊娠宣言」でめでたく結婚、というしたたかな女の戦略が功を奏す。「奉子成婚」(子供を授かった結婚という意味の中国造語)という言葉の流行が示すとおり、道徳的にも婚前交渉にまったく抵抗はなくなったようだ。
また、この世代は離婚率も高くなっているらしい。中国人民網(チャイナネット)によれば、中国国家民政部発表の2011年1~3月期における離婚件数は前年同期比17.1%増加しており、特に「80後世代」のスピード離婚が目立っているという。
親の過保護のもとに、経済成長のなかでワガママに育ってきた「80後世代」が確実に中国の風習や文化も変えつつあるようだ。
【杉本 尚丈】
*記事へのご意見はこちら