<「国進民退」や「城郷一体化」に対応した戦略とは?>
日本の中小企業の中国事業をとりまく環境は、大きく変わってきている。その中で、現地政府系企業や国有企業の力の増大、いわゆる「国進民退」や、経済成長の主役が都市から周辺農村との一体化開発へとシフトしてきている「城郷一体化」といった例が挙げられる。
たしかに中国のGDPは伸びているが、固定資産への投資が主導している。財政出動の最重要部分のひとつである社会インフラ整備事業のうち、そのほとんどは国有企業によるものだ。また、通信・エネルギーなど、外需の落ち込みによる影響が少ない分野もほとんどが国有企業だ。このように国有企業が伸びて、民間企業が苦戦を強いられている現状がある。中国では、投資主導の成長が続く限り、官民の格差が拡大していくと思われる。とはいえ、このような「国進民退」のなかで、外資企業の一部では、国有企業との新たなアライアンスを構築する動きも見られている。日本の中小企業にとっては、今後、重要性が増す中国の国有企業との取引を拡大させ、苦戦している多くの日系企業からの脱却を目指さなければならない。日本の中小企業が「日系依存型」から「脱日系」へと進めるためには、経営の現地化を目指すべきだ。現地の勝ち組企業とwin-winな関係を構築するためには、現地での情報力の強化を優先させなければいけないのではないか。
一方で、「城郷一体化」の動きも加速している。中国が改革開放した後、農業から製造業へのシフトが進められ、農村としての県を廃止し、都市部としての市を新設した「廃県設市」が続けられてきた。その結果、全人口に占める都市人口の割合が、1980年が約19%だったにも関わらず、2009年には46.6%にまで急進した。15年ごろには総人口に占める都市の人口は50%を超えると予想されている。「城郷一体化」が加速するなか、日本の中小企業はどういう取り組みをすべきか。まずは「日本仕様」からの脱却をめざさなければならない。つまり「日本仕様」からの単なるコストダウンだけではなく、製品の設計、調達、製造などすべての面で、徹底的に「現地化」して、「現地価格」を目指す必要がある。そのためには、現地企業との協力関係の構築、生産委託などを活用して、価格の「現地化」を目指すことが重要といえる。
【杉本 尚丈】
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