福岡県議会の政務調査費に不適正な支出があったとして、NPO法人 市民オンブズマン福岡(児嶋研二代表)が行なった住民監査請求は、5月9日に棄却された。同請求は、約1億円の返還請求などの措置について福岡県知事へ勧告するよう求めたもので、同NPOは、6月初旬に福岡地方裁判所へ同じ内容で提訴する方針だ。
同NPOの請求を棄却した福岡県監査委員会は、問題とされた政務調査費の支出について、県議会事務局の説明を求めており、そのなかで同請求に対しての"反論"が行なわれた。監査委員会の通知をもとに、どのような説明がなされたかを順番に見ていく。
<政務調査活動と政党・後援会活動>
同NPOが不適正としたのは、まず、按分(比例して分けること)されていない人件費、事務所費、広報費、報告書作成費、パソコン、デジカメなど高額な事務用品費、通信運搬費、使用料貸借料など。これらの使途に関して、調査研究活動であったことの厳格な説明責任が果たされておらず、実質、政党・後援会活動における使用と区別できないと指摘。「政務調査費に関する事務処理要領」では、区別できない場合は「2分の1を上限とする按分」にかけられるとして、指摘した額の2分の1である7,384万6,765万円を違法支出とした。
これに対し、監査結果の通知では、まず政務調査活動の定義を説明。それは、県政に関わる調査研究や情報収集、県民・政治家・行政関係者・民間団体などとの意見交換、住民からの要望および意見の聴取や住民との意見交換、住民に対して行なう広報活動、その他、議長が必要と認める活動とされた。また、各会派は、議会運営委員会が決定した事務処理要領の詳細な指針に沿って政務調査費の支出などについて制度を運用してきたとした。
その上で、まず問題とされた人件費については、「関係人調査の結果、議員控室の勤務職員は調査研究活動に専従している」と説明。また、パソコンなどの事務用品については、請求人(市民オンブズマン福岡)に"具体的に他の目的で使用された"とする主張がないこと、関係者が「専ら調査研究活動に使用している」と主張したことをあげた。よって請求は「合理性がなく認めることはできない」という。つまり、「疑わしきは罰せず」ということになる。しかしながら、議員が「区別について厳格な説明を行なっていない」ことのほうはどうなるのだろうか。
同NPOの児嶋代表は、「政務調査活動の定義としてあげられた内容は、議員が行なっていることのすべて」と指摘する。
実際のところ、意見交換や広報活動においては、政務調査活動と政党・後援会活動の明確な区分が困難だ。政党の肩書きをつけ、「○○党の××県議」と見られている以上は、実質的に政党活動の要素も含まれてしまうからである。
【県政取材班】
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