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プロ意識欠如の三重奏~ワールドゲートカンパニー事件
発信!北九州
2011年5月30日 07:00

<区切りを迎えた先物取引事件>

先物取引勧誘 北九州の女性などに虚偽の説明を行なって先物取引の勧誘をしたとして警察の捜査を受け、被害者から第三者破産を申し立てられていた(株)ワールドゲートカンパニー(福岡市博多区)。同社に破産手続開始決定が下りたことで、事件はひとつの区切りを迎えた。しかし、福岡や宮城を中心に多くの被害者を出した先物取引事件の被害額は30億円に膨れ上がるとも言われ、被害者救済の点では道半ばだ。高齢者を食い物にした悪徳金融コンサルには金融のプロとしての意識を求めるべくもない。しかしながら、同事件に関して各方面の「プロ意識」に疑問符が付いた。

<後手に回った財産の保全>

 4月14日付の官報には、ワールドゲートカンパニーに関する「破産手続における包括的禁止命令」と「破産手続における保全管理命令」の記事が掲載されている。これらはワールドゲートカンパニーの財産隠しを阻止するためのものだ。命令が出された日付は4月1日(第三者破産申立の数日後)。にもかかわらず、事件が公になった4月14日の午前の時点でワールドゲートカンパニー側に送達が済んでおらず、命令の効力が生じていなかったことが判明している。すなわち、第三者破産申立てが判明してから送達が済むまでの間、ワールドゲートカンパニーは合法的に資産を移転させて隠すことができたことになる。

 加害企業の資産隠しと所在不明が当たり前のように起こる消費者事件では、事前の調査や送達の手引きの面で被害者側弁護士の役割が非常に重要となる。表沙汰になれば逃げられてしまうため、情報管理も厳重になされなければならない。にもかかわらず、本件では命令の効力が生じる前に官報を通じて第三者破産申立てなどの事実が表面化してしまい、弁護団のもとに問い合わせが殺到。弁護団は、急きょ同日の昼に記者会見を開く羽目となった。命令から官報掲載までの流れは機械的に進むことからすれば、かかる事態の原因は担当した弁護団の脇の甘さにあったと言わざるを得ない。

 多くの煩雑な処理を要する消費者事件を手掛ける心意気は評価されるべきであろう。しかし、被害者救済は義憤だけでは進まないこともまた事実だ。弁護士人員の急増と競争激化のなか、弁護士としてのスキルを磨く「プロ意識」を強く求めたい。

<速報合戦の功罪と仇花>

 他方で、メディアとして自戒させられた点もある。4月14日の午後、弊社も含めて各メディアはワールドゲートカンパニーに対する第三者破産申立についての速報合戦となった。被害額30億円の消費者事件ともなれば、ネットだけでなくテレビや新聞をも賑わすことになるのだが、これが資産隠しの一助、すなわち被害者救済の妨げになったのではないかとの自問があるのだ。

 さらに言えば、ある大手メディアは以下のように報じている。
 ―『今年1月、特定商取引法違反(不実の告知)の疑いで福岡、宮城両県警の家宅捜索を受けていた投資コンサルタント会社「ワールドゲートカンパニー」(福岡市博多区)が、14日までに福岡地裁に破産を申請した』―

 あたかも同社が「自己破産」の申請を行なったかのような報道である。被害者(債権者)がストップをかける「第三者破産」と、加害者(債務者)が自ら身辺整理をする「自己破産」とでは、その意味合いが大きく異なる。後者は加害者が資産を隠したうえで逃げ切りを図ろうとしているとのニュアンスすら含むからだ。報道を目にした被害者のショックは想像に難くなく、伝える側はその意味合いを分かっていたのかにも疑問が残る。
 いかなる立場でも、いかなる体制を敷いていようと、人が手掛けるものには必ずミスが付きまとう。これを阻止する最後の砦は何か。自らが負う職責の意味に思いを致すこと、すなわち「プロ意識」なのだと自戒させられた事件であった。


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