法定得票数を超えた場合、公費(税金)で負担されることになる選挙ポスター。水増し請求などの問題が明るみになっているが、立候補者や印刷業者のモラルのほかに、現行制度で定められたポスター費用の上限額にも問題がある。
選挙ポスター1枚あたりの作成単価は「福岡市議会議員及び福岡市長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例」(福岡市条例第2号、1994(平成6)年3月31日)によって、『(30万1,875円+510円48銭×ポスター掲示場数)÷ポスター掲示場数』と定められている。この30万1,875円とは、デザイン料や写真撮影料などを含む企画費で、510円48銭が印刷費とされている。
福岡市選挙管理委員会によると、同条例の金額は公職選挙法施行令の金額をそのまま準用しているとのこと。同条例が94年に制定された時の企画費は25万7,500円で印刷費は462円88銭であった。その後、企画費や印刷費の改正が同施行令の改正にあわせて95年、98年、2001年に見直され、その度に増額され続けて現在の金額となっている。また、最後の改正(01年10月)から約10年、その上限額は変わっていない。
同条例に規定された企画費や印刷費の金額の根拠については、全国市区選挙管理委員会連合会が関連法令の解釈などについて、全国の地方自治体や学術団体などへ毎月発行している機関誌「選挙時報」93年5月25日発行の選挙時報 第42巻第5号に記載がある。これによると「もとより、単価の設定にあたっては、国政選挙の場合を上限とし、当該地方公共団体における実情を十分勘案して"適正な額"を定めるべきものである」「企画費を実勢に反映した適正な額とすることにより、"作成単価の高騰を抑える"ことが可能だろう」とある。
しかしながら実際のところ、「適正な額」を定めるのは難しい。デザイナーやカメラマンによって請求する費用はまちまち。当然、実績があり有名な人ほど、値段はあがってくる。平均的な費用というものが設定しづらいのである。
また、"実情"を鑑みるに、「作成単価の高騰を抑える」との部分にも疑問符がつく。たとえば、4月10日執行の福岡市議選の選挙ポスター作成費では、たとえば東区において最安値15万5,400円と上限額一杯の最高額97万2,534円(ともに契約時の金額)の差額は81万7,134円。素朴な疑問だが、選挙ポスターを見比べて、その差の理由を説明できる人はいるだろうか。
【吉澤 英朗】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら