2011年、中国共産党設立から90年目を迎えた中国では、複数のテレビ局で日中戦争を題材にした作品が連日放送されている。なかでも人気が高いのは「亮剣」シリーズの再放送だ。同作品は、05年にDVD化もされた連続テレビドラマである。その内容は、共産党八路軍・李運龍と国民党軍・楚雲飛のふたりの指揮官を中心に、日中戦争とその後の両党の対立におけるさまざまな人間ドラマを描いたもの。あまりの人気ぶりのためか、インターネットのオンラインゲームにもなっている。
「亮剣」とは、兵器面において優勢であった日本軍に対し、戦いを挑む中国兵の精神論を表した言葉。作品のなかには、中国人俳優が演じる日本兵が敵方として登場し、日本語の台詞を話す。筆者が上海市で視聴した内容では、中国兵の捕虜に対し防具をつけた日本軍が格闘技で痛めつける場面が...。主要キャラクターの人物に決闘を挑まれた日本軍の指揮官の「1対1とは卑怯だ」との台詞には、複雑な印象を受けた。
このほか日中戦争を題材にした映画・ドラマは数え切れないほどたくさんある。ただし、毛沢東や周恩来といった建国の英雄を描いたものは少ないという。その理由は、政府からの厳しい検閲により、フィクションの部分でも、史実と違う内容が許されないからだ。そのためか、戦争作品の主人公などは、兵士や一般指揮官など、架空(?)の人物たちが多いようだ。
節目ごとに、過去の戦争を題材にした映画がテレビなどで放映されるのは、日本においても同様であるが、連日の放送には政治的意図が含まれているようにも思える。実際のところ、中国政府が推し進める作品は、スポンサーもつきやすく、人気も高いため、テレビ会社にとっても利益を出しやすい、いわば「ドル箱」のジャンルだ。政治・社会的背景から今後も日中戦争を題材にした映画は作られ続けるだろう。
【山下 康太】
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