上海から西方へ約3時間、高速鉄道「和諧号」の窓から田畑と高層マンションが交互に現れる風景を見ながら、南京を通り過ぎ、やがてたどり着いたのが安徽省合肥市。人口約490万人ともいわれる都市で、駅から降り立つと街は喧騒につつまれていた。
「貧しい省」―中国でビジネスをしていた日本人だけでなく、現地の中国人ですらそう口をそろえて評するのが安徽省である。その所以は、沿岸部から程遠い内陸部で何もない田舎(農業地帯)だという点にあるようだ。今でも過去のイメージを引きずる人は「貧しい省」だと思っているだろう。
とはいえ、もはやそのイメージは、少なくとも省都・合肥市においては覆されようとしている。市街地には外資系のスーパーや高級ホテル、高級マンションが(建設中も含めて)立ち並び、中国有数のデベロッパーが開発したショッピングモールもある。都市高速が環状に走り、今また地下鉄や高速鉄道が新たに建設されている。
今回の視察の目的は、まさに中国内陸部の発展前夜を体現する都市開発を体験することにある。元ヤオハン代表の和田一夫氏との縁もあり、合肥の可能性について知った。とくに注目したのは「濵湖新区」と呼ばれる地域一帯である。
「濱湖新区」とは、総合的なニュータウンとして整備することを目指し、「濱湖新区開発プロジェクト」として大規模な開発を進めている地域である。合肥市の南部に位置する、中国で5番目に大きい淡水湖「巣湖」に隣接する土地296㎢を開発し、06年11月15日に着工した壮大な計画だ。
行政区域、工業区域、住宅区域、観光区域を一体化した環境に優しい新都市を建設するもので、2020 年には110 万人が居住することを計画している。ちなみに、濱湖新区の面積は東京23区のほぼ半分に相当し、いかにスケールの大きな事業かがわかる。
09年1月初旬、合肥市のトップである共産党合肥市委員会書記の孫金龍氏は、合肥市の不動産市場の発展状況を視察すべく、合肥市の関係部門の責任者たちを引き連れて土地開発事業の現場を訪れた。このとき、孫氏は不動産市場の活性化を図る目的で、自ら80m2の住宅を1m2当たり3,000元強(約4万5,000円)の価格で購入したと地元メディアで報じられている。
このプロジェクトは孫氏が中心となって推進しており、「合肥市が発展すれば、ほかに30以上ある同規模の500万都市の成功モデルになる」(孫氏)と期待しているということだ。
この地の開発は、とりもなおさず「上海浦東」をモデルとした「安徽浦東」を実現させることに尽きる。中国の地方都市の経済発展プロジェクトのモデルケースにしたいという中央政府の意向もあるようだ。
【大根田 康介】
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