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【マックス経営講座】米中戦略・経済対話~元西南学院大学・商学部教授 立石揚志氏
チャイナビジネス最前線
2011年6月 9日 11:33

 アメリカと中国が経済や安全保障分野の課題を議論する閣僚級の第三回米中戦略・経済対話が5月10日、ワシントンで閉幕しました。
 経済協力の合意文書では、中国が「人民元相場の弾力性を引き続き高める」と約束したかたちとなりました。
 アメリカ側は「為替相場の行き過ぎた変動を監視する」という表現で、ドル相場を大幅に下落をさせないように努力する姿勢を示しました。この背景にある「今世界が恐れる真の危機」とは、ドルという通貨の信認が失われることなのです。

 米財務省によれば、2011年の米国債(市場性のある財務省証券)の発行残高(3月末)は約9兆6,500億ドル。そのうち、海外保有残高は4兆4,700億ドルで、香港を含む中国が1兆2,787億ドル、日本が8,900億ドルを保有しています。つまり、日中両国が市場でファイナンスされた米国債発行残高の約4分の1、米国債海外発行残高の約2分の1を引き受けているのです。

 中国は今や外貨準備高が3兆ドルを超え、上記の米国債以外でもその大部分をドルで保有している現実があります。つまり、ドルの下落は直接的に中国の資産の減少になります。中国がアメリカに対し、「人民元の切り上げばかり要求せず、米ドルの価格維持をしっかりやってくれ」と言っているのは、これが理由です。

 安全保障に関しては、クリントン米国務長官が「両国軍の武力衝突につながるような危険な計算違いを避けたい」と述べています。今回の対話では、初めて両軍の制服組が加わりました。南シナ海を巡る日本やアジアを含む対立や北朝鮮の核問題など、この地域には深刻な火種が多く、米中がここに焦点を当てた話し合いを継続的にする意義は小さくはありません。

 米中が、少なくともアジア太平洋地域の重要問題を仕切るような現状に対し、韓国内では今後「アメリカに付くか、中国に付くか」といった議論が表面化し、アメリカの怒りを買っている場面があるようです。アメリカとしては、韓国は当然アメリカと同盟関係であり、そのような議論が出ること自身が問題だとしています。
 一方、日本ではまったくそのような議論はなく、日米同盟を当然視しているのはマスコミの論調です。

 対話のなかでの実務的な問題として、企業投資環境の改善でも突っ込んだ議論が行なわれました。中国が米国内でのM&Aなど積極的な投資受け入れを要請し、アメリカ側は中国に金融業などのいっそうの市場開放を求めています。中国側がこの問題を重視するのは、海外から米企業への投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)が、中国企業による米企業の買収を認めない例が増えているためです。

 最近では、中国通信機器大手の華為技術が計画した、米ITベンチャー企業3リーフシステムの資産買収を撤回するように勧告しています。
 一方、アメリカは、金融機関が中国で活動を広げられるよう規制緩和を求めています。ガイトナー米財務長官は記者会見で、「金融システムは依然として基本的に国家に管理されている」と指摘しています。このような状況のなかでも、米中はいっそう関係を深めています。

立石 揚志立石 揚志(たていし ようじ)  1940年8月17日上海生まれ(本籍地、福岡県)。64年、東京外国語大学中国科を卒業し、「丸紅(株)」に入社。同社大連支店長兼瀋陽出張所長を務め、92年退職。同年、「(有)九州新アジアセンター」代表に就任。95年より「(株)アジアビジネスセンター」常務取締役を務める。94年、西南学院大學商学部助教授、98年に同学部教授に昇格、03年4月から「(財)福岡県中小企業振興センター」国際取引特定相談員を務めるなど社会活動も多数。趣味は晩酌と孫とのテニス。

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