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チャイナビジネス最前線

早すぎた中国進出~リベンジを目論むIT業界の雄
チャイナビジネス最前線
2011年6月13日 15:16

 インターネット業界の先駆者的存在で、2010年度の売上高10億円を突破している、福岡のインターネットコンサルティング会社、(株)ペンシル。彼らは05年3月、上海に事務所を構えたものの、4年ほどでマーケティングサイトを閉じた過去がある。IT業界としての中国進出は早かったが、中国独特のビジネス文化に苦労したという。ただ、その過去の苦い経験があってこそ、今のペンシルがあるという覚田義明社長に、中国ビジネスの考え方を伺った。

(株)ペンシルのオフィスが入るビル

<03年に中国市場の調査をスタート>

 ペンシルが上海オフィスをオープンさせたのは05年3月だが、その約2年前から中国市場の調査に入った。一般にインターネットコンサルティング会社と言われているが、実際は、クライアントの素晴らしい商品のマーケティング、ブランディング、WEBサイト、受注システムのコンサルティングまで全般を行なっている。クライアントとのパートナーとして、インターネットを使って、どうやればモノが売れるかの仕組みをつくることが、覚田社長が描くペンシルのビジネスモデルなのだという。

(株)ペンシル 覚田 義明 社長 洗剤、石けん、トイレタリー製品や医薬品などを手掛ける大手、ライオン(株)のインターネットでの売上を4年間で600倍にした実績を誇るペンシル。ただ、その頃、覚田社長が考えたことは、少子化が進む国内市場はいずれ息詰まるだろう。今のクライアントのターゲットが30歳代だとすると、10年後の人口が減っていくことが目に見えているなか、何もしなければ、ペンシルのクライアントたちの売上が10%落ちることは見えている。そう考えたときに、ペンシルがやるべき次なるサービスはクライアントのマーケットを広げるソリューションを提供することだと考えたのだという。

 ペンシルのコンサルティングは「研究開発型」を売りとしている。なので、ペンシル自身が中国マーケットを実験する必要があると考えたという。03年ごろ、覚田社長自身がほぼ毎月、中国に出張した。それを2年ほど続けているうちに、現地に知り合いが何人かできて、現地の社長は日本人ではダメだということもわかった。中国では、うまくいっていたサービスがその直後にすぐにうまくいかなくなることも多い。法律関係もころころと変わる。そのスピードがものすごく早いので、現地できちんと経営を任せられる中国人を登用した。05年春のことだった。

 中国進出のもうひとつのきっかけは、やはり福岡からの距離だったという。今でこそ東京のクライアントが9割を占めるペンシルだが、05年当時は、7割が福岡のクライアントで、残る3割が東京のクライアント。今後、東京のクライアントを増やそうと考えたとき、飛行機で同じ1時間30分のところの東京よりもさらに大きな市場がある上海進出と考えた。日本では、東京でモノが売れると全国に火がつくことが多いが、上海でモノが売れると、中国全土に広がるのなら、人口の規模で言うならば、その価値は10倍になるのではと考えたという。ただ、成功できる保証はどこにもないので、それならば、ペンシル自身が先に進出して、自分で試してみようということで、上海オフィスのオープンとなった。

<大手企業の現地法人とのパイプ作りになった中国進出>

 2005年当時の上海のインターネット人口は約2万人いて、Eコマース市場(電子商取引市場)も前年比200%アップという爆発的に伸びている状況だったという。これまでのペンシルのマーケティングの実績は当時500件を超えていた。アメリカのモデルにならい、それを日本に反映させて実績を積んできたが、これからはそのスタイルをもって、中国に進出すべきだと考えたという。

 そこで、最初はウェブマーケティングをやろうと思い、中国にマーケティングサイトを立ち上げた。それから12回にわたり、紙とインターネットを使ったマーケティング実験を上海でやってみた。そのなかには、TOTOのウォシュレットやSONYのGPS、カゴメの野菜ジュースの市場調査などもあった。すべて現地法人からの依頼だったが、中国に進出したことがきっかけで、大手企業の現地法人とのパイプができた。ただ、中国でのマーケティング調査は難しかった。データの不正やウソも多く、ハッカーなどの被害も多発していた。全体的にまだ問題が多いと感じたという。

 ペンシルの戦略は、自腹を切ってマーケティングを行ない、まずは実績を作ることが目的だったという。中国において、個人がどういう生活環境なのかをマーケティングしたうえで、クライアントに提案する。インターネット上に書かれている中国情報のいろんな資料にも目を通したが、ほとんど良いことしか書かれていなかったし、そのデータがクライアントに合うかはわからないことが多い。自分の足で稼いで、自分の目で見て集めた生のデータこそ、クライアントに提案できるのだと覚田社長は話す。
自社マーケティングをした結果、この時点では「まだ早い」ということがわかり、09年ごろ、一時マーケティングサイトを閉鎖した。

(株)ペンシル 覚田 義明 社長 覚田社長は言う。問題をひとつひとつ解決していくためには、PDCA(計画→実行→検証→改善)の流れは大事だが、私はDCAPの場合もある。まず実行(テストマーケ)してみる。プランを机の上でつくることも大事だが、自分の目で見て、何かを感じることはもっと大事なのだと。いろいろ悩むより、「とにかくやってみよう」、それが覚田社長の信条だ。

 中国マーケットは誰にも無視できない市場だ。アジアを制しなければ、グローバルビジネスはなしえない。今や日本だけでは「ローカルビジネス」と言われる日は、もうそこまで来ている。覚田社長は早ければ3年以内に再度、アジア進出のリベンジをしたいという。

【杉本 尚丈】

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