<一頓挫は肥やし>
ちょうど1年前、野田憲男氏はビジネス人生の最悪の状態に追い込まれていた。同氏が経営する化粧品ネット通販の(株)ぺー・ジェー・セー・デー(本社:東京都渋谷区、以下、P.G.C.D.)が大口債権者であり株主であった東京アート(株)から第三者破産をかけられ破産手続開始決定(開始日は5月21日と東京地裁は決定)されていたのである。
野田企画時代から幾多の危機に直面して乗り切ってきた野田氏である。粘り腰には定評があったから「この一頓挫を肥やしにする」と筆者は確信していた(このシリーズは『ビジネス人生シリーズ・東京で負けた野田さん』を参照)。
しかし、1年前の野田氏の憔悴ぶりを眺めると「これは大事だな。大丈夫かな」と多少狼狽をしたのは事実であった。一時代前に一世を風靡した俳優・草刈正雄氏を凌ぐ男前であった憲男さんの当時の容姿が跡形もないのだ。同氏に会った誰でもが「これでは終えてしまう」と不安感に駆られたであろう。それほど土俵際に押し込まれていた証拠。苦し紛れにか知らないが、新会社・(株)ペー・ジェー・セー・デー・ロジ(P.G.C.D.R.と呼ぶ)を設立し営業を継承した(だが、この策は成功した)。
そして最近、消息しれずのところを6カ月ぶりに憲男さんに会った。ビックリ仰天、驚いた。昔の男前の風貌が蘇っていた。「あー、P.G.C.D.R.の営業は好調のようだな」と直感した。同氏の弁舌爽やかさも復活したそうだ。思えば昨年(2010年)8月、9月に20件を超えるメールが届いた。皆さん、当時の(株)ペー・ジェー・セー・デーの熱烈なお客さんたちだったのだ。「P.G.C.D.のことがまったくわからずに不安でした。ネット検索をしていますとNET-IBに辿りつきました。そこで記事を読んでてん末がよーく解かりました。ありがとうございます。あの化粧品は私たちの命です」というものばかりであった。「これだけのコアなお客を掴んでいれば再起は容易だ」と直感はしていた。
<ネット通販で勝つ>
昨年8月から9月まで、読者からの問い合せ状況を詳細に野田氏へ伝えた。「いやー、やってきたことが間違いではなかったことは有難いことだ。お客に良い品質の商品を真面目に提供し続けてブランディングしてきたからこそ顧客から支持を受け入れられたのだ」と感慨深い顔になっていた。近況報告によると営業のほうもまずは順調に回転しているそうである。東京アートとの法廷闘争も先方の動きが鈍いという。
嬉しい情報も教えてくれた。『P.G.C.D.』ブランドの5商品が「'11Yahoo!BEATY あなたが選ぶ通販コスメ大賞」にノミネートされたことである。09年度は朝用ソープ『サボン クレール』が洗顔料部門で2位を獲得したという偉大な実績もある。今回も好位置を占めるであろう。憲男さんは周知の通り、商業施設のコンサルを行なっていた。ところが1992年頃から「店舗で小売りをしていても日本では成り立たない」と警告を発してきた。加えること、「これからの小売りの主流はネット通販になる」と声を大にして説いてきた。コンサルから実業に転じた憲男さんがようやく『化粧品ネット通販』ビジネスの満開になるところまで接近したようである。
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