<業績は好調のようだが>
楽天の2010年12期連結決算の決算は好調である(下記の3期業績参照)。この好調さを背景にして三木谷さんは3月に次のようなトップ・メッセージをネット上に出した。
株主・投資家の皆様には平素より格別のご支援およびご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。また、この度の東北地方太平洋沖地震により、被災された株主・投資家および被災地の方々に対しまして、心よりお見舞い申し上げるとともに、1日も早い復興を喪心よりお祈り申し上げます。
2010年において楽天グループは、ユーザーの利便性を高める様々な施策を行なった結果、EC事業およびトラベル事業を中心に高い成長を持続しました。さらに、金融サービスの強化によりインターネットの総業サービス企業として「楽天経済圏」をより強固なものとすることができました。
国内市場における優位性を強化する一方で、「真の世界企業への脱皮の1年」をテーマに掲げ、日本市場のみならず、グローバル市場で事業展開するためのさまざまな取組を進めてまいりました。その結果、過去最高の売上高および営業利益を達成するとともに、配当についても1株当たり100円から200円に増額しました。
創業15年目になる2011年は、世界でも類を見ないユニークなビジネスモデルである「楽天経済圏」のグローバル展開を加速的に推進し、「真の世界企業」に向けて突き進んでまいります。株主・投資家の皆様におかれましては、今後とも一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。(引用終わり)
自信あふれるトップ・メッセージは過去最高の売上高および営業利益を達成したからこそ、為せる業である。ところがこのトップ・メッセージから3カ月もしないうちに金融事業の消費者金要部門で1,000億円の損失をだす事態となった。
<楽天KCを売却>
6月2日、楽天は「クレジットカード事業を再構築する」と発表した。具体的に説明するとカード事業会社の楽天KC(本社:福岡市)の楽天カード事業を会社分割して全額出資の子会社楽天カード(本社:東京都品川区)に移管する。もう少し捕捉すると楽天KCはクレジットカードと消費者金融業のふたつの事業で構成されていた。そのクレジットカード事業を融資の保証業務を行なっている楽天カードが引き取る。要は、楽天カードは消費者金融業に特化するということである。
楽天クレジットは楽天カードに、楽天カードはKCカードにそれぞれ商号を変更する。商変したKCカードは金融業のJトラスト(本社:大阪市)に売却する。意味するところ楽天は、消費者金融業から全面的に撤退するのである。この結果、楽天は2011年12月期連結決算で楽天KCの株式の売却損や債権放棄などで計1,000億円の損失を計上、最終益段階で赤字に転落する可能性があるという。
2008年12月期においても大幅赤字をだしている。この時も東京放送ホールディングスの買収失敗の損失を計上した。三木谷さんにとっては企業買収を巡って2回目の失敗だ。ただ、会社の業績は上記した通り好調。至らぬことをせずに『楽天通販』に特化すれば損失補填は容易にできる。中国に、海外に活路を見いだせば必ずやグローバル企業になるであろう。
※記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら