トンネルとトンネルの間に線路がない。信じがたい光景だった。岩手県の沿岸部を走る三陸鉄道は、地震と津波により甚大な被害を受けた。
三陸鉄道は年間延べ90万人が利用する地元住民の大切な交通手段。第三セクターの経営のもと、北リアス線(久慈―宮古間)、南リアス線(釜石―盛間)の2路線で運行している。
リアス式海岸の風景を楽しむことができ、年間約10万人の観光客が訪れる観光スポットでもある。"三鉄"の愛称で親しまれ、県内外問わずファンが多い。
3月11日、東日本大震災が発生。三陸鉄道を地震と津波が襲った。駅舎、線路、橋梁が流された。南リアス線は全滅状態。北リアス線は終点駅である久慈駅、宮古駅の被害が少なかったため、3月中には部分運行を再開したが、景勝地がある島越(しまのこし)などが被害を受けた。被害総額は約70億円にものぼるという。
被害により電車通学をしていた学生たちはバス移動を強いられている。部活動を早めに切り上げなければならないなど、時間の融通がききづらくなっているとのこと。もちろん、観光客の客足は止まっている。地元からは一刻も早い復旧が望まれている。
現在の運転再開区間は全線の3分の1、輸送力は震災前の10分の1程度。震災直後から社員が再開に向けて必死の努力をし、5日後には一部再開にこぎ着けた。全線復旧の目標期間は3年以内。北リアス線は、陸東の大きい陸中野田を年内、島越を2年以内に復旧する予定だ。しかし、問題は費用面。最大180億円の予算が必要と言われている。もちろん、自主財源で補える金額ではなく、国からの補助なしでは復旧は困難。優先されるものは多々あるが、住民の「足」である鉄道の早期復旧は、被災地復興への大きな一歩にもなりうる。
【楢崎 賢治】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら