<ネットで見込み客を獲得>
だが、商品力の強さだけで売上高50億円が実現できるほど、不動産販売は簡単なものではない。事実、デザイナーズアパートの販売事業に関しては、競合他社は多く存在している。いや、多いどころではなく、不動産業界の一角はこの手の商品がひしめいていると言える。そのなかでも同社が秀でて成長を遂げている理由は、販売見込み先を潤沢に獲得できているからにほかならない。
同社がインターネットから獲得する見込み客数は、月間約1,500件にもおよんでいる。具体的には、アパート経営に関しての資料請求だが、これらのユーザーを見込み客として、営業プロセスを進めていく。不動産各社が電話やチラシ、大手住宅サイトなどへの広告出稿により必至に見込み客を探しているなかで、同社は独自のノウハウで見込み客を獲得している。
この件について、古木社長に話を聞いたところ、「インターネットを使った集客方法は、ヤフーのリスティング広告やグーグルのアドセンス広告を使って検索キーワードに対する広告出稿をしている」そうだ。しかも、そのノウハウを社内に蓄積するべく、専属の社員がこれを運用しているという。たしかに、同社の社名を検索してみると、企業ホームページとは別に、見込み客獲得(リード)型のランディングページが検索結果の広告枠に掲載されている。
ヤフーの発表によれば、検索結果が表示されるページで広告枠がクリックされている割合は全体の45%にもおよぶという。これを考慮すると、インターネットを活用した見込み客の獲得は、従来の営業エリアの常識を根本から覆す。もちろん、地域を限定したネット広告の出稿方法もあるが、商圏が拡大すれば、これまでは考えられない事業の広がりが見えてくる。
<環境に適応する経営スタイル>
改めて感じるのは、見込み客獲得の集客力が、インベスターズの次なる飛躍を可能にしているということだ。これまで投資型賃貸住宅事業に専念してきた同社も、今期からは他社不動産や戸建注文住宅の販売を始めた。また、この6月からは東京都渋谷区で、自社企画物件だけではなく他社物件をも織り交ぜた賃貸仲介業をスタート。さらに、次の一手として中古アパートのリノベーション事業の準備も進めているという。
従来の発想にとらわれず、独自の発想を研磨し続けたことで切り開いた同社の現状も、第三者が成功事例として話を聞いたとしても、簡単に真似はできない。同社の存在は木造投資アパートを売る同業者のみならず、不況下においても成長し続ける企業として、業界の枠を超えて存在感を示している。とくにネットでの集客に注力し、大きな成果を上げている点においては、ネットに新たな販路を見出そうとする多くの企業にとっての手本となる存在である。
とはいえ、性急な事業展開の背景に、投資型賃貸住宅事業の上限を意識させられると同時に、賃貸経営の根幹とも言うべき高い入居率の維持についても、今後の見通しにおいて不透明感は解消されていない。今後のインベスターズには持続可能な企業運営と、次世代型経営の急先鋒の名に相応しいボーダレスな世界戦略の推進を、勝手ながらも期待してみたい。
【児玉 崇】
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(株)インベスターズ
代 表:古木 大咲
所在地:福岡市博多区祇園町7-20
設 立:2006年1月
資本金:2,200万円
売上高:(10/12)約26億2,300万円
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