2008年7月に国から認定を受けた「中心市街地活性化基本計画(小倉地区、黒崎地区)」は、今年度で4年次を迎え、残すところ1年半余りとなった。官民一体となって知恵と金をつぎ込み、矢継ぎ早に施策を繰り出してきた活性化策が実を結ぶのか。近況を概観する。
<都市の再興を期して>
1963年の5市合併を経て成長を続けてきた北九州市。しかし、炭田の閉鎖が進むのと時期を同じくして経済の地盤沈下が北九州全体を覆い、もう1つの政令指定都市・福岡市との差も徐々に広がっていくことになる。国土を貫く「4大工業地帯」の一角と呼ばれたのも今は昔。児童向け百科事典に掲載される「3大工業地帯」に、北九州の名はすでにない。
かかる地域経済の低迷により、中心市街地の商店街は販売額・商店数の減少に晒され、これが来街者数にも影響をおよぼすという負のスパイラルが生じていく。さらには、成熟都市であったがゆえに高齢化の進展が早期に進み、かかる複合的な要因のもとで街の活気が損なわれていった。中心市街地―なかでも小倉や黒崎の活性化を求める声が年々高まり、これを受けて官民一体での取り組みが繰り広げられてきた。とくに小倉地区は、九州の玄関口であり、北九州における商業の中核地区である。地元経済界がその復活に寄せる期待は、並大抵のものではない。
そうしてできあがったのが、「中心市街地活性化基本計画(小倉地区、黒崎地区)」であった。もちろん、中心市街地の地盤沈下は小倉や黒崎に限ったことではなく、いたるところで見られる全国的な傾向である。国は「まちづくり3法」(中心市街地活性化法、大規模小売店舗立地法、都市計画法)を改正して「コンパクトシティ」に基本方針を求め、さまざまな都市機能を中心部に集積させることで、都市の持続的発展を図ることを目指している。先の「中心市街地活性化基本計画」もこれに沿ったものであり、08年7月には総理大臣による認定を受けたことで、国から重点的な支援を受けられる体制が整うこととなった。
<段階的に進められる活性化事業>
小倉地区の中心市街地活性化計画に謳われた基本方針は、『世界の環境首都を目指す北九州市の広域都市圏の中心核(顔)にふさわしい機能・環境・つながりを創出する先進都心・小倉』というものであり、これを実現するために3つの活性化目標が掲げられた。すなわち、「広域商業拠点の賑わいの向上」、「文化的で非日常的な都心の魅力向上」、「昼間人口の拡大による活力向上」である。さらに、個々の目標を実現するための具体的事業が設定され、その総数は103事業にのぼる。昨年度までに15事業が完了し82事業が実施中という状況のなか、10年10月に行なわれた九州厚生年金会館のリニューアルオープンや、同年12月に新築移転が完了した小倉記念病院のニュースは記憶にも新しい。
他方で、気になるのはその効果だろう。既存の主要大型商業施設やコンベンション施設への来場者数は、基準となる事業開始の前年度をいずれも下回り、昼間人口も06年度に比べて約2,800人(4.4%)の減少。毎期130億円前後の予算を投じているにしては物足りない数字で、苦戦の感は否めない。
ただ、商店街エリアを中心とした歩行者通行量が2年連続で増加していることに照らせば、きめ細かな取り組みの効果が徐々に表れつつあるとも評価できる。来年半ばにはJR小倉北口「ラフォーレ原宿 小倉店」跡地に「北九州市漫画ミュージアム」がオープンする予定であり、今年度の重点事業のなかにはオフィスビルの空き室対策として「オフィス立地促進事業補助金」も盛り込まれている。これらの施策によって新たな人の流れを生み出すことができれば、先の指標も上向くことが予想されるだけに、事業の円滑な遂行が望まれる。
【田口 芳州】
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