「やっぱりだったか」。国会審議を見ながら「九電のやりそうなことだ」と考えていたが、社長会見におよんで情けない思いでいっぱいになった。
東京電力に続いて財界の雄がまたひとつ「地に堕ちた」瞬間である。そして、九州トップ企業の栄光は消え去った。
6日、九州電力(株)(本社:福岡市中央区渡辺通)の眞部利應社長が記者会見を開き、6月26日、経済産業省が玄海原発再稼動のために中継した説明番組に九電幹部が「やらせメール」を送信するよう関係各所に指示していたことを認め、謝罪した。
「やらせメール」については、先月からネット上で九電による情報操作が話題になっており、事実ならいずれ火を噴く問題と見られていた。共産党が国会で取り上げたため重大な事態となったが、"九電の体質"を考えれば驚くことではない。
もともと九電の姿勢は、福島第一原発の事故が招いた現実を無視した横暴なものだった。
福岡市の調査情報サイト「HUNTER」が報じてきたものを参考にさせてもらうと、福島第一の事故を過小評価する原発啓発冊子を無料配布したり、経済記者に特別な待遇を与え手なずけたりするなど、なりふり構わぬ愚行を繰り返していた。
4月の福岡県知事選挙では、深刻さを増す福島の事故をよそに、松尾新吾会長が後援会長と選対本部長を兼任。開票日には「バンザイ三唱」までやってのけた。被災者感情などお構いなしではしゃぎまわる財界トップに、厳しい批判が出ていたことは言うまでもない。
監督官庁である経済産業省から天下りを受け入れたり、福岡県知事の後ろ盾となって県政を壟断したりするなど、公益企業のすることではあるまい。
玄海原発の運転再開問題に関しては、早い時期から判断権限者を「玄海町」と「佐賀県」に限定し、多くの自治体や市民の声を圧殺。怨嗟の声が広がるなかでの「メール事件」となった。
市民より財界・政界を重要視する九電の体質は、地域独占企業の驕りが招いたものだ。
市民が支払う電気料金で成り立つ会社でありながら、原点を忘れた九電は、解体的な改革を行なわなければ、いずれ東電と同じ運命をたどることになるだろう。
もっとも、すでにその一歩を踏み出してはいるのだが―。
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