福岡市のホテルで8月30日、国際化支援セミナーが開かれた。そのなかで、人材活用においては中国が、賃金面などで、すでに折り合いがつかなくなりつつあるとして、次なる候補地として、ネパールが挙げられた。
今回のセミナーは、財団法人国際労務管理財団(IPM)が主催したもので、ネパールに関するものは初の試みだ。IPMは今後、これからの人事交流の土地として、ネパールに力を入れるつもりで、10月21日からは現地に視察団を送り込むことにしている。今回は、そのためにネパールとはどんな国なのか、現在、九州大学教育国際化推進室に勤務する、ポウデル・サントシュ氏が講演した。
ネパール連邦民主共和国は、北海道の約2倍の面積に約2,650万人が住んでいる。国土は横長で、約8割が山岳丘陵地帯だが、北からヒマラヤ山脈地帯、中間山岳地帯、平地のタライ地方と、大きく3つの地域に分けることができる。ヒマラヤ地帯は世界一の高さを誇るエベレスト山など観光地として盛んで、平地は農業が主な産業だ。首都のカトマンズは人口250万人ぐらいの都市で、世界遺産が7つある観光都市となっている。ネパールは多民族国家で、36の人種が共存している。また、宗教はヒンズー教、仏教、など多様な宗教が混在していて、文化も多種多様だ。古くから伝わることわざで、「ネパールは36種類の花が咲いているガーデン」といわれていて、人種間、宗教間の争いなどがきわめて少ない温厚な民族だという。
教育制度はかなり脆弱なもので、10年前の統計だが、識字率は53.7%に過ぎない。国民の8割が農業に従事しているためか、高校を卒業する者も全国民の1割程度しかいない。主な産業は農業、縫製業、観光業だが、1人当たりのGDPが約562ドルと、日本の80分の1程度しかない。また、国民の1割が海外に出稼ぎに行っていて、GDPの2割は海外からの仕送りだという。名目GDP約125億ドルのうち、国内産業から生み出される額はわずか4割に満たないのが現状だという。
インドを除いた出稼ぎ先のほとんどはカタール、UAE、サウジアラビアなどの中東諸国が多く、日本には今のところ1万7500人程度が来ている状態だ。福岡には736人のネパール人が来ていて、福岡だけで見ると、中国、韓国に続いて第3位の国となっている。
【杉本 尚丈】
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