夏休みにさまざまな体験を重ねた児童らは、新学期にたくさんの質問を学校に持ち込む。今年の質問には『震災復興』や『放射能汚染』など、複雑な話題も登場することが予想され、2学期を目前に控えた先生たちは準備に忙しい。
そうした背景もあってか、北九州の教職員が集う北九州市教職員インターネット交流会のHPには『北九州市立で給食のある学校の校長先生方へ 公開質問状:学校給食における放射能対策について』と題された質問状に関するトピックスが掲載されている。
この公開質問状は、北九州市で技術系コンサルタント会社を営む中村友一氏と「ふくおかの大地と自然を守ろう!わらびの会」(北九州市小倉南区、白水弘美代表)によるもの。放射能汚染された食品への対策など6項目が質問事項として掲げられている。
北九州市が被災地・岩手県釜石市からのガレキを受け入れる方針を表明したり、戸畑区の企業が千葉県流山市から受け入れた焼却灰で製品製造を行なっていた事実が表面化したりと、北九州市民の間には放射線による汚染を懸念する声があがっている。かかる懸念を「被災地差別」と批判する声もあるが、福島第一原発から200kmも離れた千葉県流山市の焼却灰から2万8,000ベクレルもの高濃度放射線が検出されたとなれば、そうした懸念も理解できるところ。ちなみに、岩手県釜石市と福島第一原発の距離もほぼ200kmとなっている。
北九州市は福岡市と並んで九州をリードする立場にある都市であり、率先して復興支援にあたらねばならないとの声もある。他方で、先のような懸念が市民の間にあれば、努めてその解消にあたらねばならず、そこでは市民の健康と安全が最優先に据えられなければならない。ある県議は「ガレキ受け入れについて当面延期する方針の説明を市から受けた」とするが、公式見解では無いこともあり、懸念を抱く市民の側には不満と不安がくすぶっている。かかるせめぎ合いを解消し、理解を促すには細やかな情報公開しかない。
質問状を出した中村氏は、チェルノブイリの子供たちの前例を引いたうえで「私は技術系の人間ですから、客観的なデータに基づいて物事を判断します。それでも放射線の危険にはいまだ解明されていないところもたくさんあるのですが、わからない場合には最悪のケースを想定して判断することが必要です」と語る。こどもを持つ技術者の憂いは「公開質問状」をはじめとした積極的な情報発信に繋がり、アクセスの面でも着実に支持者を増やしつつあるようだ。
先ごろ出された東日本産の各農畜産物の出荷解除は、個々の製品の安全性を示している。しかし、安全基準をパスしたもののなかに、微量の放射性物質が検出されたものが含まれていることもある。とすれば、これらが最終的に集積する各地の処理場では、今後、大なり小なり千葉県流山市と同じ問題が浮上してくることが予想される。
放射線のリスクは、すでに九州に住む我々にとっても身近な問題になりつつある。
【発信!北九州】
▼関連リンク
・公開質問状「学校給食における放射能対策について」(PDF)
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