<JR博多シティの開業から半年>
開業から早くも半年が過ぎ去ろうとしているJR博多シティ。3月11日には東日本大震災が発生し、消費マインドの冷え込みに見舞われたものの、5月以降は集客数、売上げとも順調に推移している。
例年、夏休みは旅行客が増えるので、新幹線の利用客も取り込めれば、予想以上の半期決算を見込めるだろう。そこで、これまでの好調要因をあげながら、博多駅、天神における流通戦争の概況を見ていきたい。
<集客、売上げとも2ケタ増を維持>
同駅ビルは開業からずっと好調を維持し、集客について、5月は487万人、6月は392万人、セール期に入った7月は456万人を達成した。3カ月の平均売上げはアミュプラザで計画比の15%以上で推移した(博多ターミナルビル広報)。核テナントの東急ハンズも4月から7月までは累計で同10%以上を維持し、夏休み以降も2ケタの伸びを示している(同店)。
これに対し、天神地区の3月業績は、岩田屋三越が対前年比で11.6%減、博多大丸が14.2%減となり、福岡パルコは2年目に入った4月は34.1%減と、軒並み前年を割る状況だ。
両地区の百貨店を比較した場合、ファッションブランドや高級時計、宝飾品はほぼ棲み分けができているが、デパ地下は「一度は博多阪急の商品を食べてみたい」という消費者心理が働くことから、天神地区にも大きく影響したと見て取れる。
一方、多数のテナントが共通するファッションビルは深刻だ。特にパルコは5月が26.2%減、6月が22%減、セール期に入った7月でも15%減と極度に落ち込んでいる。昨年が開業初年度で業績好調だったことを割り引いても、かなりのお客がJR博多シティに流れたと見て間違いない。
恐らく、テナントやターゲットが共通する天神コアやソラリアプラザ、天神地下街も、同駅ビルへの持ち出し分が売上げダウンにつながったと推測できる。
<新幹線利用と買い物はリンクしない>
では、九州新幹線は博多駅、天神の物販、飲食にどれほどの影響を与えたのであろうか。開通1カ月のJR九州の利用状況は、博多・熊本間が約74万6,000人で前年同期の在来線特急比で30%増、熊本・鹿児島中央間は約43万人で55%増だった。
同社は博多・熊本間の利用者数が目標の40%増を割り込んだことに対し、「震災による出控えや自粛ムードがあって伸び悩んだ」と
分析した。ただ、 新幹線利用客=買い物、食事にはならないだろうから、 駅ビルへの効果としては懐疑的だ。同駅ビルがターゲットにする「自分らしいスタイルを楽しむ女性」ほど、新幹線のチケット代を商品購入費に回した方が得
と考えるはず。これは同駅ビルの各人気店舗が開設しているネット通販が好調なことを見ても良くわかる。
開業時、同駅ビルは九州全域、関西、ひいてはアジアからも集客すると豪語した。だが、震災の影響で外国人客は低迷、関西圏も再開発の大阪が捕捉したと見られる。つまり、開業から集客数、売上げとも順調を維持しているのは、天神地区からの持ち出しを含め、福岡隣県の足下商圏から集客した結果だと思われる。新幹線による広域集客は、博多駅はもちろん、天神の物販売上げを必ずしも押し上げたわけではないようだ。
【釼 英雄】
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