<秋の天神は目玉不足>
秋以降、天神は反転攻勢に打って出られるのだろうか。9月以降の動向は天神コアが同16日にリニューアルオープン。また、NTT都市開発が手がける「レソラ天神」の核店舗、バーニーズニューヨーク福岡店が同じ日に開店する程度である。
店舗毎にはブランド導入やテナント入れ替えはあるだろうが、新規オープンや大規模な改装は上記のふたつ以外には見られない。
それでも各店が期待しているのは、バーニーズ開店による新たな集客やお客の揺り戻しだろう。しかし、概要を見る限り、品揃えは高級ブランドを中心に服や靴、時計・ジュエリー、化粧品、ギフト用品に限られており、とても強力な集客装置になるとは思えない。
もともと、同店はニューヨークダウンタウン発の紳士服専門店で、1986年に婦人服館を併設。メンズ・レディスの大型ファッション専門店としてその地位を固めた。日本には89年に伊勢丹がライセンス契約を結んで導入。新宿店や横浜店などを開業し、国内のデザイナーズブランドも取り入れながら、高級ファッション専門店として運営してきた。
しかし、06年に伊勢丹が百貨店不況による本業回帰を打ち出し、住友商事と東京海上キャピタル系のファンドに株式を売却。その後、住友商事が商社のノウハウを生かした国内外のコレクションブランド中心の商品政策になっている。
<バーニーズ頼みの集客に限界>
つまり、バーニーズは直営店を持つ高級ブランドと、そこまでに至らないブランドのなかから、バイヤーが選び抜いた商品を"平場展開"したセレクトストアということになる。
そのなかには「アキコ オガワ」「ミホコ サイトウ」「オブジェスタンダール」など、国内コレクションで活躍する日本人デザイナーのブランドもある。ただ、4層という福岡店のフロア構成を見るかぎり、新宿店のような品揃えは期待できないだろう。
たしかにバーニーズの商品は従来の天神、博多駅にない感度、グレードではあるが、品揃えに奥行きがなく、客層も限られている。それが強力な集客装置にならないという理由だ。
9月以降、岩田屋三越や博多大丸は、バーニーズが期待はずれだったというお客の受け皿にはなれるかもしれない。でも、抜本的な博多駅対策については具体策を示しておらず、打つ手がない状態のようだ。
9月30日に増床オープンするキャナルシティ博多は、ファストファッションスタジアム構想で対抗する。しかし、福岡初進出のH&Mは日本で急激に売上げを落としており、業界ではブームは終わったとさえ見られている。さらに他店はほとんどが既存業態で、とても天神や博多駅と戦えるとは思えない。
以上のことから、この半年の福岡流通戦争は、博多駅に軍配を上げざるを得ない。天神、他には来年の巻き返しを期待したい。
【釼 英雄】
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