そもそも家具は親から子へ、子から孫へと代々受け継がれ、長く大切に使われるものである。それゆえに値の張るものであったが、いつしか大量生産大量消費の時代に突入し、安価な家具が主流となった。中国産、ベトナム産などの安価な家具が世のなかに増え、国内で真面目に家具作りを行なっていても時代の波に太刀打ちできなくなり、地場家具関連企業の多くは、廃業または破産の選択肢を迫られ、現在に至る。しかし、大川は暗い話題ばかりではない。元気な企業もそれなりに存在する。
福岡ソフトバンクホークスのヤフードームでの公式試合のテレビ中継の際、バックネット側の広告を出しているのが、卸と小売の両方を手掛ける(株)関家具である。同社はアウトレットから低価格帯、高級ブランドまで非常に幅広い品揃えが特徴で、休日ともなると大川市内の店舗は買い物客で一杯となる。新婚夫婦から定年して快適な余生を楽しもうとする老夫婦など、店舗に訪れる人々の顔ぶれはさまざまだ。顧客ニーズに合わせて商品構成を行なっているのが同社の強み。低価格、高級のどちらかに偏らずバランス感覚が取れている。
製造メーカーを見てみると、広松木工(株)は地道に良い商品を世に送り出している。それなりに価格の張るものではあるが、モノは良いと評判だ。低価格路線が続いていた大川地区においても、良い物を作ることにこだわり続けたことが、ファンの獲得につながっている。また、福岡でも今年(2011年)7月に行なわれた、有名ハウスメーカーらが主催する家具展示会において、カッシーナ、リッツウェル、カリモク、飛騨産業、マルニ木工などの国内外の有名ブランドの集うなか、大川代表として同社も参加していた。以上、例にあげた2社のように斜陽産業とも言われる大川家具業界のなかで、元気な企業も少なからずある。
「最近の消費者は"安くて良い物"を買い求める傾向がありますが、"高くて良い物"を買おうという風潮も出てきました。家具に関して言えば高くて良い物を購入し、大事に使えば、長く使用できます。ゴミを少なくしてCO2削減するという意識も出てきているので、不景気ではありますが、無理をしてでも高い家具を買い求める傾向になっていくかと思われます」と、業界関係者は語る。いずれにせよ、時代の流れを読み取り、消費者のニーズを追求していくことが、今後の事業継続のカギを握っていることは間違いない。
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