佐賀県議会 原子力安全対策等特別委員会は、九州電力・大坪潔晴佐賀市社長(参考人)の説明が終わり、委員からの質疑が始まった。しかし、参考人からは「記憶違い」「聞き間違い」などと、作成時における非を認める答えばかりが繰り返された。質疑、『備忘録』とされる問題のメモが九電社内に広まった経緯について質問するものへと移っていったのだが――。
<真相は闇のなか>
土井敏行委員「非常に不可解なのは、皆さんが『そういう意図はなかった』と、単なるメモであったと。しかし誰かがこれを利用して流れて、それを利用されているんですね。それは、まだ誰だかわからないと。これは第三者委員会で明らかになるのかわかりませんけれども、会社全体としてこうしなければならないというプレッシャーというのが、国からのプレッシャーなのかもしれませんが、そういった空気、環境があったのではないですか。そんなことはありませんか」
桃崎峰人副委員長「段上参考人」
段上守参考人「こうしなければいけない、あるいは、そういうプレッシャーはございません。むしろ、我々も積極的に...」
(傍聴席「きこえません」)
桃崎副委員長「土井敏行君」
土井委員「私は、非常にわからない部分があるわけですよ。なんでこういうかたちになってしまったのか。九州電力さんの体質かもわかりませんけれども、この一連の事件について皆さんどのように感じておられるかお聞きします」
桃崎副委員長「参考人にお知らせします。もう少しマイクを近づけて声を大きくお願いします」
段上参考人「こういうふうな事態になったことは非常に残念ですし、私の意図したものとはまったく違ったものになってしまったということで、非常に残念に思っております。それから、こういう会があるよという周知ということでございますので、どういうふうに周知しろという話は細かく指示しなくても細かい案内が出ますので、そこまで気を配らなくても(いい)ということでございまして、そういう意味では非常に...退任のあいさつ...そういう意味で、非常に申し訳ありません。たしかに管理不行き届きであったと思います」
桃崎副委員長「諸岡参考人」
諸岡雅俊参考人「私は、こういう説明会があるということを周知するように指示をしましたけれども、その後のフォロー、あるいは、どういうことをやったかということを聞くことをやっておりませんでしたので、管理が不十分であったと反省しております」
桃崎副委員長「大坪参考人」
大坪参考人「私も、支店の総括責任者として、本来的には県内にある声をぜひいただきたいということで始めたんですけれども、結果的には、その指示が徹底せずに、社員からの投稿も発生してしまったということで、結果責任としては、申し訳ないというふうに思っております。重ねて、メモの管理についても本店のなかのことも含めまして九州電力としては大いに問題であると認識いたしております。重ね重ねになりますけれども、お詫びの言葉を申し上げるしか(ありません)」
桃崎副委員長「土井敏行君」
土井委員「お詫びの言葉がありましたけれども、だいたいこの委員会はですね、本来、原子力の安全性の科学的、客観的に議論する委員会なんですよ。安全を確保したうえでどうできるのかと。安全性の確保が第一であります。そういったことをやる場ですけれども、今回、誰が悪いとか、誰かを糾弾するような、極めて感情的なこういった議論をせざるをえないようになっている。その責任の一旦は九州電力にあるんですよ」
(傍聴席でざわめき)
土井委員「違う、私は県にもある、知事にもあると思います。しかし、皆さんにも当然あるわけであります。ただですね、私はそういったなかで、早く本論に戻さなければいけないと思っていますので、ここは、やっぱり、しっかりとですね、県民、国民が注視しているわけでありますので、真相を明らかにされなければいけないと思っていますし、今後、このようなことが起こらないようにしていかなければいかんと思います。九州電力(株)といえば、我々からすれば、九州ナンバーワンの企業ですよ。我々九州人のなかでは誇りとなる企業ですよ。九州の生活産業経済の電気エネルギーの供給者としてライフラインを握っているまさに九州経済を引っ張るリーディングカンパニーのような存在であるわけですよ。
しかし、それなりにですね、当然のことながら、大きな社会的責任があるわけですよ。九州電力さんは資本金がですね、なんと2,373億円。売り上げについては1兆4,490億円。従業員さんはですね、1万2,689人もいらっしゃいます。総資産にいたってはですね3兆8,908億円もあるんですね。そんなすごい企業です。ある意味ではエクセレントカンパニーなんですね。多分、若いときに就職のときに一番あこがれていた企業であろうと思います。当然ですね、そこに果たされる役割はきわめて大きいし、社会的に果たされなければならない役割も責任もきわめて大きいと思います。ここはですね、第三者委員会の結果が出てくるんでありましょうけれども、こういう事件が起きないような再発防止策はもちろんのことですが、やはり、我々がいつまでもすばらしいと思えるような企業として輝いてもらわなければいけないと思っているんですよ。
ひとつはですね、会社の姿勢、経営姿勢というのをちょっと(調べて)みました。ここにはですね、『私たちは、お客さまや地域社会をはじめとする企業活動に関わるすべての方々とともに考え行動することで、持続的に企業価値を生み出していきます』という言葉があります。企業価値って何ですか。ただ儲かる会社ですか。そうじゃないと思います。やっぱり企業としての社会的責任を果たしている、みんながその会社があることでその存在が喜ばれる、そんな企業でなければですね、これは決して本当の意味での企業価値ではないと思っています。ここは、きちっと猛省をしていただいて、しっかりとこういうことが起こらないように努めていただいて、なおかつですね、安全の確保に努めていただくことをお願いして質問を終わります。以上です」
今回の説明・質疑応答の内容を簡潔にまとめると、次のようなものとなる。
玄海原発の安全対策の説明番組において、古川康 佐賀県知事が、九電の「やらせメール」を指示、さらには同番組そのものへの関与をにおわせる内容は、メモ作成者・大坪 九電佐賀支社長の「聞き違い」「記憶違い」あるいは、原発再開を強く願う自身の想いの表れ。
同メモは、退任のあいさつに古川知事の元を訪れた段上 前九電副社長の『備忘録』として作られたが、他九電社員の間で出回った経緯については不明。
そもそも退任直前の幹部ふたりが、なぜ、今後の玄海原発の展開に関する内容を私的な『備忘録』とする必要があったのだろうか。会談の内容を重要と認識しているならば、それは後任者への引継ぎ資料的なもので、もともと出回るものとして作られていたのではないか。
さらには、古川知事だけでなく、佐賀県議会においても九電との関係に疑いの目が向けられている。実際に、同特別委が行なわれた当日(8月23日)、同特別委員長の木原奉文県議が九電社員から政治献金を受けていた事実が発覚し、木原県議の委員長辞任へと発展した。
説明から質疑応答まで、「不可解さ」がつきまとうものであったと言わざるを得ない。
【吉澤 英朗、山下 康太】
※太字部分、括弧内はNET-IB編集部の補足です。
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