「中洲を辞めて地元に帰ります。今までありがとう」
あるキャバクラ嬢からお別れのメールが届いた。メールを見て「やはり」というのが正直な感想だ。その娘が働く店には、1、2回ほど行ったきりで、とんと足を運んでいなかった。その店の経営者兼店長は男性で、たいてい店の子がその男性よりも早く来て、午後10時30分過ぎに店を開けるようなところだった。
店長が店の子に手を付けるという話も聞いていた。たいてい店の客は一見さんがほとんど。あえてリピーターと呼べるのは店長の友人らしき人物ばかり。少し話を聞いただけで経営が上手くいってないだろうと推測できる。
そうした店のあり様に辟易したのか、「いつかは自分の店をもちたい」と語っていたその娘は中洲を去ることになった。ずるずると引っ張るよりはずい分とましなのかもしれない。最初は、たまたま行きつけの店に派遣で来ていた時に知り合った。その店のことを聞き、「店を変えたほうがいい」と、アドバイスもしていたのだが...。
ここ数年で、中洲は勝ち組と負け組の明暗が顕著になってきた。同伴のノルマまで作る店もあれば、店の子のほとんどに対し客の誘いがひっきりなしという店もある。メインストリートである中洲大通に面したテナントでさえ空きがある一方で、そうした空きテナントに進出するだけでなく、店舗規模を拡大する店もある。
店の経営状態がいいか悪いかは、店に行かなくても、店の娘から来るメールでわかる。繁盛している店ほど「今夜、店に来ない?」といった露骨な営業メールはしてこない。それが逆効果であることも教育されている。ひどいケースになると、10分程度しか話しておらず、源氏名とメルアド以外は何も知らないのに同伴の話を持ちかけてくる。
常識的にありえるだろうか? 小生は、たとえ宝くじで3億円があたっても、知らない人に"焼肉をおごる"ようなことはしない。それは、ビルの上からカネをばらまくのに等しい行為である。
そもそも同伴、アフターと言えば、気に入った娘を客が口説いてようやく実現する『夢』と言っても過言ではない。ところが最近は、ダメな店にとって客を捕獲するひとつの手段と化している気がする。ダメな店ほど、「何が悪いのかわからない」という。わからないから改善のしようがない。そして、店が傾き始めると目先の数字にとらわれ、営業が場当たり的になる。かくして、勝ち組との格差がものすごいスピードで開いていく。
読者諸兄、くれぐれもご用心を! 場当たり営業の終着駅は「ぼったくり」である。
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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