<「素晴らしいですね!」と知らない人に褒められたら注意!>
趣味で読み上げた俳句や短歌、絵画を見て「あなたの作品は素晴らしい!」、「著名な先生が絶賛しているので、是非出展しませんか?」などと褒め上げ、高額な出展料や掲載料を請求されるという相談が、各県の消費者センターに寄せられている。
このような商法は「褒め上げ商法」と呼ばれここ数年急増している新手の商法。今年(2011年)8月に、消費者庁から特定商取引法違反として9カ月の業務停止命令を受けた東京の業者は、新聞の俳句欄などに掲載された名前を電話帳で照合して電話番号を入手したのち、被害者を「先生」と呼んで褒め上げ、「先生の作品をぜひ当社のホームページに掲載させて欲しい。原稿料は出せませんが、掲載料は無料です」と勧誘。気分よく被害者が契約承諾書にサインして返送すると、「広告掲載料金6万3,000円」と記載された請求書が送られてきた。 被害者は「こんな契約は承認していない」と抗議したが、業者は「契約されたのですからお金を払うのは当たり前です」と突き放し、支払いを催促したという。
また、ある被害者も同様に勧誘を受け、後日37万8,000円もの請求書が届き、この業者に抗議したものの「ネット掲載は無料ですが、新聞掲載は有料です」と、そもそも新聞掲載の説明は受けていないにもかかわらず支払いを要求されたという。業者の度重なる催促に負け、この被害者は約3分の1の額を支払ったものの、「残金を払え」と週1回のペースで請求書が送られ続けていたという。
驚くべきことにこの業者は実質2名で運営しているにもかかわらず、同じ住所に5社も法人を登記。1人の高齢者に対し、次々と社名を変えては褒め上げ、執拗な勧誘販売を繰り返していた。業務停止前までこの業者に引っかかった被害者は約400人。業者の銀行口座に入っていた、いわゆる「被害金額」は約2億円もあった。
国民生活センターの調べによると、年々被害者件数については08年度が150件、09年、10年度には約350件以上と倍増。平均請求金額は25万円以上にのぼるという。基本的に一般紙が投稿する場合は有料で呼びかけることはほとんどない。そのため、被害者にしてみれば支払いを拒否すればいいのだが、しつこく請求してくるので払ってしまったというケースが多いという。加えて「褒められたついでに騙された」という引け目からなかなか相談しにくいことから、実際の被害者数は消費者センターへ寄せられている相談件数よりはるかに多いものと思われる。
最近では短歌や俳句だけでなく、「あなたの作った陶器をインターネット美術館に掲載しませんか」、「これまでの貴重なビジネス経験を本にまとめませんか」、「素晴らしい歌声ですね。CDを出しませんか」などという新手の手口も出ていると聞く。高齢者の方またはご両親をお持ちの皆様、くれぐれもご用心を!
【小山 仁】
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