6日、(株)安愚楽牧場(本社:栃木県那須町、三ヶ尻久美子代表)は、東京地裁から民事再生手続きの開始決定を受けた。しかしながら、債権者説明会における同社の決算に関する説明には、ある『疑義』が生じている。同社は、会社法による大会社に該当し、負債総額4,330億円、7万3,000人超の債権者(出資オーナー)の破綻は、社会に与える影響が大きいことからも、同社の民事再生法適用には十分な注意が必要である。
ある『疑義』とは、同社が会社法で義務付けられている『会計監査法人(公認会計士)の監査』を受けていたかどうかが不明なことである。債権者説明会において同社は、11年3月期決算について「税理士のチェックを経た」と説明しているが、なぜ税理士が登場するのか理解できない。今回の問題は、税法ではなく会社法に照らして適正であったかどうかが問われるからだ。
8月の民事再生法適用申請時に発表された負債総額は約4,330億円。その約4カ月前の11年3月期の負債総額619億円から、これほど乖離(かいり)した例は、今までお目にかかったことがない。誰もが、これまでの決算は何だったのかと不審に思うであろう。
同社は、「オーナーからの牛の買戻し資金を債務認識したための増加」としているが、総資産655億円の企業としては、単純計算で3,600億円余の債務超過になる。
また、同社は、実態が出資預託取引ながら、形式的に商品売買方式の会計処理を行なってきた。なぜ、実態に即した会計処理ではないのか、売買方式によらなければならなかったワケも明らかにされていない。
会社法の要求する主たる注意事項では、「決算日以降の後発現象」(今回のケースでいう東日本大震災の発生とそれにともなう福島第一原発事故)、簿外となっている「偶発債務」(代表的なものとして保証債務)、そして「継続企業の前提事項」などがある。
わずか4カ月後に膨大に増えた負債金額を正規の決算で債務認識できなかったとしても、注記事項として出資オーナー(債権者)へ開示すべきだったのではないだろうか。そのうえ会計監査法人(公認会計士)による監査を受けていないとなれば、明らかな会社法違反となる。そもそも安愚楽牧場が、民事再生法の適用を受ける資格があるのだろうか――。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら