不況からの立ち直りと、震災の影響で止まっていた現場の再稼働により一気に活気を帯びた感のある福岡の建築業界。とくに躯体系の専門工事業者は、忙しさに加えて慢性的な人手不足に頭を悩ませている。背景には、淘汰によって業者数が減少している事情と、従来からの課題であった業界への入職者不足にある。福岡への波及はいまだ弱いとはいえ、人手不足が著しい関東圏では職人の日当が高騰しているとの話も聞かれ、早晩、ゼネコン・専門工事業者間での請負単価にも影響が出てくるものと予想される。
他方で、これまで低単価請負で仕事を掻き集めていた業者のなかには、人手不足に対応できずにゼネコンへのお詫び行脚を強いられている企業もある模様。仮に人員を調達できなければ現場はストップを余儀なくされ、工期の延長は多額の損害を生んでしまうことから、当該業者に対するゼネコンからの風当たりは強い。また、二次下請や三次下請の立場からみても、仕事の予定が大幅に狂ってしまううえに単価も安いとなれば、そのようなサブコンに付き従う必要性も感じられない。結果、下請離れも進むという板挟みの悪循環に陥ることになる。
建設技能者の育成には5年近い期間が掛り、この人手不足は当面解消しそうにない。歯を食いしばって「適正単価」を唱え続けた専門工事業者の努力が報われる時が来るのか。躯体系専門工事業者は期待をもって日々の建設作業にあたっている。
【田口 芳州】
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