2011年1月31日、福岡市は、須崎ふ頭(福岡市中央区)市有地約1.2haの日清製粉(東京)への売却を受け入れ、同社は新工場を建設すると発表した。日清製粉には、博多港から九州向けへ陸揚げされる輸入小麦の取り扱いで100%を占めることから、老朽化した鳥栖工場(鳥栖市)と筑後工場(筑後市)を閉鎖し、集約化と競争力強化を図りたいというねらいがあった。そのため、昨年(10年)秋ごろから市有地そばの民間保有地取得に乗り出していたという。それと並行して福岡市側へ、市有地購入の打診を行なっていた。福岡市にとっては、昨年6月から進めてきた交渉が実を結んだ形となったが、経済効果や雇用促進への弾みに加え、須崎ふ頭再開発の一端としての期待がある。
しかし、大きな誤算が発生した。売却地の建物の解体経費が足らなくなったのだ。同建物は1972年1月に竣工。1階は市が所有する上屋、2階は民間所有の倉庫であり、鉄筋コンクリート造で延べ面積は8,400㎡の広さ。福岡市では、建物の解体作業等のために上屋の解体経費に当初8億1,100万円を計上し、そのうち上屋、水道管、電柱等物件移転補償費を4億600万円と見込んでいた。しかし、再確認したところ、新たに同経費2億800万円の追加が必要と判明。これで上屋、水道管、電柱等物件移転補償費は6億1,400万円となり、解体にかかる総経費は合計10億1,900万円にまでふくらんでしまった。福岡市は、「サイロなどの特殊な工作物が汎用品ではなく高価な製作品であったこと、32個の特殊工作物(サイロ)を設置するため、建物の構造も強化なものであったため」と、説明を行なっている。
また、県基準地価と同程度の額で算出した額の売却収入の11億1,500万円から解体費用の経費10億1,900万円を差し引いた額は9,600万円としているが、県基準地価の査定が低ければ赤字に転落する可能性があるのだ。これではなんのための売却か。上述した解体費用も「いくら建物が強固なものだとしても解体費用がそんなにかかるものではないと思う」と、取材先で首をかしげる人もいた。だがすでに6月の議会で通過しており、現在では建物の解体作業が急ピッチで進められている。(写真:解体される建物)これではたして、須崎ふ頭の再開発の一端となりえるのか――。
そのような疑念のなか、日清製粉にどうしても同ふ頭に進出して欲しいがために、なにかしらの便宜を図ったのではと勘繰られる案件がほかにもあった。
【道山 憲一】
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