日清製粉(東京)は、九州地区における工場集約で須崎ふ頭に進出することを決めた。同社は、合意が明らかにされた今年(2011年)1月31日に、須崎ふ頭内の民間所有地を日清製粉グループ本社名義で取得した。
しかしながら、同社が取得した土地と福岡市が保有していた土地の間には交通機能用地として幅広い道路がある。このままでは、道路をまたいで土地が2分されるために土地としての魅力は半減しまう。ところが福岡市は、どうしても日清製粉に来ていただきたいらしく、この道路を港湾関連用地に変更。このため、すぐに道路下に敷設してある上下水道を大きく迂回させるなど荒技を発揮したのだ。VIP待遇での誘致である。
また、福岡市が、「道路を止めて工事に入ります」と、隣接する業者に説明を行なったのは9月6日。9月20日には道路を遮断し工事に入ることが決定しており、慌ただしさこのうえない。なぜこのような事態になったのか市に説明を求めると「スケジュールは決まっていたものの業者の選定に時間を要した」と、コメント。この道路を利用していた業者は「あまりにも説明がなさすぎる。しかも一方的すぎる」と、あきれ顔だった。
「すでに区画道路が整備されており、道路空間そのものは区画道路として残る。計画された当初は、交通量から将来的に必要とされていたが、現状では車が頻繁に行き交う状況にはなく、物流のサブスペースとなっており、計画道路の位置付けを外しても支障ないと考える」というのが福岡市の見解。ここでも現地の業者に対しての説明不足は否めない。
市民の血税である約2億円を解体工事費の不足分に充てたことや、過剰ともいえる企業誘致政策で市有地を売却、そして、道路を遮断してまでの便宜をはらったことは、日清製粉にいいように手玉に取られたという印象さえ受ける。今後、高島市長には、もう少し強い態度で交渉に臨むことをお願いしたいところだ。
次回、須崎ふ頭の業者から寄せられた生の声を紹介する。
【道山 憲一】
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