福岡県は13日、全国初となる暴力団組事務所の廃止を可能にする、また県指定の繁華街の飲食店への暴力団員の立ち入りを禁止することなどを盛り込んだ改正暴力団排除条例案を発表した。この改正案は、20日から開会する定例県議会に提案され、可決されれば2012年8月より施行されることになる。はたして、今なお相次ぐ発砲事件など暴力団が関連する事件から一般住民や企業を守ることができるのか――。
北九州地区をはじめ、福岡県内で多数の発砲事件が発生し、件数では全国ワースト1という状況下にあることは周知の事実である。県は昨年4月に暴力団への利益供与をした事業者への罰則を科すことを盛り込んだ県暴力団排除条例を施行し、また官民あげての暴排運動を展開してきた。しかし、フタを開けてみれば建設現場や住宅街での発砲は後を絶たない状況となっている。そのうえ、施行された暴排条例の曖昧さもあってかその効果は今ひとつと言える。
今回の改正暴排条例では、以下のような具体的な案がいる。(1)暴力団事務所に18歳未満の青少年の立ち入りを禁止、(2)暴力団事務所で青少年に違法薬物の使用が認められた(行なわれた)場合は、事務所の使用制限や廃止、(3)県公安委員会のステッカーを掲示する飲食店に組員が立ち入ることを禁止。
(1)と(2)について異論はないが、懸念される事項は(3)である。改正案では中洲・天神(福岡市)、堺町・黒崎(北九州市)、文化街(久留米市)、吉原町(飯塚市)、大正町(大牟田市)、この7カ所の繁華街を「暴力団排除特別強化地域」に指定し、暴力団員の入店を拒否するステッカーを希望すれば配布する予定という。
この件を北九州市八幡西区黒崎で飲食店を経営するA氏に問うと「入店してきたお客さんひとりずつに暴力団員かどうかを確認することはできない。ただ、仮に暴力団員と知らずに食事を提供したら利益供与となるのか?」と、素直な疑問を語った。
実はその基準の曖昧さが問題であり、明確な物差しの提示を望む声もある。本来、暴力団へ向けるべき厳しい目が、現状では企業側へ向いているような感は否めない。多くの企業は暴力団排除に協力的であり、現実的で慎重な議論を求める声も少なくはない。
【発信!北九州】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら