<泡と消えたふ頭再開発>
開発当初から九州地区への穀物の陸揚げの重要拠点として名を馳せてきた須崎ふ頭。付近には福岡都市高速の天神北インターチェンジがあり、アクセスには申し分ないところである。福岡市における数あるふ頭のなかでも天神などの商業地域へ隣接していることから天神界隈での最後の再開発地域とも呼ばれてきた。
このふ頭が脚光を浴びたのは、2005年9月、福岡市議会において山崎広太郎市長(当時)が正式にオリンピック開催地立候補を表明し、06年4月にJOCに立候補意思表明書を正式に提出したことから。市の計画案では新設の競技施設整備費に630億円、競技施設整備費に506億円、交通インフラ整備費に427億円、大会運営関連施設整備費に1,067億円、須崎ふ頭などの埋立事業費は2,740億円に達し、合計4,864億円と試算された。そのうち、市の負担額は970億円。
その後、国内開催候補地をめぐって東京都との決戦投票となったが、東京都33票、福岡市が22票との結果破れた。オリンピック誘致の頓挫と同時に泡のように消えた須崎ふ頭再開発。それから、時間の経過とともに再開発構想は薄れ、前回の記事のように地権者、業者の間ではあきらめ感が強まっている。
<打ち込まれたクサビ>
今年(11年)1月末、日清製粉(東京)が須崎ふ頭への進出を決めた。日清製粉には、市有地単体で売却しただけでなく、隣接する民間用地と市有地の間にある道路を強引に港湾道路に変更して売却。その下に敷設されていた上下水道を大きく迂回して手直すなど、まさにVIP待遇での誘致であると報じた。
日清製粉には鳥栖工場や筑後工場を閉鎖して須崎ふ頭に工場を新設することは、厳しい競争社会に対してコストの圧縮を図るための措置でなんら問題はないと考える。今回の日清製粉の設備投資は約100億円となると言われ、長きにわたる九州地区への供給拠点になるだろう。そのため市は当面、再生計画は立てられないとの見方も多い。長い目で見れば、日清製粉の進出に対して打ち込まれたクサビとなるだろう。
オリンピック誘致や西方沖地震による影響などに翻弄されたままで、再生計画案が立たない須崎ふ頭。最後に残された商業地に隣接する再開発可能地域として脚光を浴びる日は来るのか。高島市長には、あらためて須崎ふ頭に足を運んで現状を見ていただきたい。
【道山 憲一】
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