近年、地方分権、道州制に関する議論が、有識者、政治家の間で盛んに行なわれている。地方の衰退が顕著になった今、はたして地方分権をすすめることが、どのような地域活性化へとつながるのか。今春の選挙で初当選した新進気鋭の福岡県議会議員・松尾嘉三氏とその同志である前栃木市首席政策監・濱口和久氏が、中央と地方という2つの視点からこれからの地域活性化について語った。
―今回はゲストとして、濱口和久さんにお越しいただき、これからの地域の活性化をテーマに今年4月に福岡県議会議員に初当選した松尾嘉三氏と対談していただきます。最初に濱口さんから自己紹介をいただきたいと思います。
濱口 私は、熊本県菊池市で生まれ、地元の高校卒業後、防衛大学校に入学しました。その後、陸上自衛隊に進み、退官後は国政の場で政策の立案などに関わってきました。それから民間のシンクタンクを経て、栃木市首席政策監として地方行政の政策の統括を行なってきました。今日は、同志である松尾嘉三県議と、地方のあり方、国のあり方について福岡の地で対談する機会をいただきまして嬉しく思っております。
―ありがとうございます。では、本題に入らせていただきます。まず、少子高齢化が進み、地方の過疎化、「限界集落」という言葉もよく聞かれるようになりました。おふたりは、これからの地域活性化について何が重要だとお考えでしょうか。
松尾 まず、少子高齢化についてですが、ひとつは、国民の皆様が裕福になってきた影響かと思います。経済発展とともにそれぞれの暮らしが豊かになり、国家や社会基盤などといったものよりも、個人が価値を追求していくための生活へと傾向が変わりがちです。それが、少子化が進んでいくひとつの要因になっています。
私と濱口君は青年会議所の場で、客観的に全体を見てまいりました。そのなかで九州の人々は、気質が同じという特長があります。これは、開拓団が開いていった北海道の人々にも言えることで、この2カ所は「道州制」の導入がたやすいという感覚を共通して持っています。文化的な価値観と社会性、「九州はひとつ」という合言葉通り、同化できるんですね。地方から中央に行きましても、九州人同士で結びつくという特色があります。
地域活性化のポイントのひとつは"九州人の団結"です。九州全体のシェアを見れば、GDPはオランダ、ベルギーに匹敵するものを持っています。それを活かすためには、各市町村単位で「オンリーワンのまちづくり」を進めていかなければなりませんし、それぞれの地域にはさまざまな特色があります。
私の地元周辺にある2市1町を例にとって説明いたします。まず、那珂川町は、人口は少ないですが、緑が多く、福岡市の飲料水となる水源もあります。地元の方々には、「人口を増やして那珂川市をつくりたい」という想いもありますが、周辺地域の住民には「あの緑を守ってほしい」「水源と環境を確保してもらいたい」という想いがあります。一方、春日市では、縦横無尽に都市計画道路が張り巡らされておりまして、JRや西鉄の沿線、高速道路にも近いという地の利があり、住むには最適な環境にあります。そして大野城市は、準工業地域として位置づけられている御笠川流域にあり、大手の三和シャッターやマキタ、地場産業のアシュランなどの街の住民を雇用する産業がたくさんあります。
これからは「住み分け」の時代です。月曜から金曜までは産業のある大野城市で勤務し、夕方になれば居住空間のある春日市に戻ってくる。そして週末は、自然や緑の多い那珂川町で別荘を借りたり、キャンプをしたりするなど、レジャー的な要素を楽しむ。この2市1町を例にとると、そういうかたちです。このようなグループ的な市町村の関係を九州全体にどんどん普及させていくことが、地域活性化の下支えになると思います。
濱口 私は少子高齢化が進むということは国家が成熟したことだと捉えています。日本は明治維新以降、中央集権化をめざし、大東亜戦争に負けた以降も中央集権国家を続けました。その結果、地方が衰退したわけです。カネ、モノ、ヒトがすべて東京へ集中し、地方は過疎が進んで限界集落も現れるようになりました。
私は、これからの地域再生を考えるうえで、「官民協働」が重要なキーワードだと思っています。英語で言うと「PPP(Public Private Partnership)」です。意味するところ、官と民が役割を分担して、地域再生や都市開発、公共サービスを実施していく、そういう時代が来ているという気がしています。そして今後、地方自治体の首長、知事、市長が打ち出す政策は、国政にまで影響をおよぼすような流れができつつあります。ますます地方の存在が重要になっています。
そのなかで福岡は九州の中心であり、福岡が発信することは九州の発信につながります。まさに国政への影響力を与える流れをつくっていく時代に来ていると考えています。
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