―不安なのは、国のリーダーにビジョンがないと言われるなか、国家観の喪失が「分権」でとまらず、さらに進んで「独立」まで行くのではないかということです。
濱口 今の政治がなぜ国家ビジョンを描けないかというと、ひとつは選挙制度に問題があると思います。衆議院議員の任期は4年ですが、解散がいつあるかという不安から、次の選挙のことばかり考えています。そのため、国会開会中以外は、常に選挙区回りをしています。本来は、国会議員なのですから、閉会中など時間があるときは国家ビジョンを考え、政策の勉強し、自らを研鑽する時間にあてるべきです。
それに現在、民主党政権は政治主導の名のもとで官僚を排除しています。さらには官僚バッシングまで行なう始末です。私は、優秀な官僚が天下国家のために働く意欲を持つ環境をつくるべきだと考えています。たとえば、東大出のキャリア官僚の年収は40歳で800万円くらいです。同じ経歴で民間では40歳で1,000万円の年収のサラリーマンはたくさんいます。理想や志だけでは生活はできませんし、限界があります。
経済産業省を辞めた私の知り合いは、毎日家に帰るのが深夜の2時、3時で睡眠時間は3時間。昼間は陳情団の対応、夜は何らかの会合。国会会期中は質問待機。これでは国家ビジョンとか言っている余裕はありません。
すべて国へ陳情に行かなければならないというのは悪循環です。主権を除けば地方へもっと分権すべきで、そうすることで、国会議員も官僚も国家ビジョンを描けるような仕組みができ上がっていくと思います。
―リーダーシップをとって仕切っていく人がいない。そう痛感させたのが今回の東日本大震災だと思います。
濱口 今回の震災は、東北で起こったわけですが、台風、洪水なども含めていろんな自然災害はどこでおこってもおかしくない。数年前から各自治体では危機管理官や防災官というポストを設けて自衛隊のOBなどを就けていますが、そのポストに部下はいません。本来、防災や安心・安全というものは、部下を与えて組織をつくらないと有事のときに機能しません。
松尾 現状、本当に実動できる組織はあるのだろうか、という疑問を感じずにはいられません。「机上の防災対策だった」。濱口さんは今回の震災対応を見て、そういうイメージを抱きませんか。
濱口 政治の究極の目的は危機管理であって、「想定外」があってはいけない。すべてのシナリオ、すべての想定にいかに対応できるかを日頃からやっておくのが政治であり、行政だと思います。原発事故や津波などへの対策を、平時に研究し、訓練しておくのが危機管理です。
松尾 やはり、政治といえども「だろう運転」ではなく、「かもしれない運転」でなければいけません。県民の安全・安心を守るために新しい企画・立案を提言したとしても、官僚の「前例がない」という一言でつぶされたりする。私は将来の日本の政治で、「それは想定外です」とか聞きたくない。たとえば、今回のような大震災と同時にテロが起きた場合は、どこがどう対応するのかと日頃から極限の危機管理を想定していなければならない。
【文・構成:山下 康太】
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