―結局、シミュレーションをせずに法や制度をつくってしまうから、いざというときに機能不全に陥ってしまう。
濱口 地下鉄サリン事件も「あんな事件はしょっちゅうあるわけがない」と国は言っている。確率的には低いかもしれないが、起こる可能性はある。それに備えておくのが政治なのではないでしょうか。
日本の場合、大日本帝国憲法には非常事態条項がありましたが、日本国憲法にはありません。非常事態条項があれば、政府はあらゆる局面で危機的な事態に速やかに対応できると思います。
松尾 航空自衛隊で聞いた話ですが、大震災時に福岡空港から自衛隊輸送機を被災地へ出動させたくても、国難である東日本大震災という有事にも関わらず、「1日4回の離発着まで」という制約を決められたままだそうです。
災害発生時に自衛隊機が使えれば、被災地にもっと早く大量の支援物資が届いたのではないでしょうか。国難と言っているわけですから、自衛隊がスムーズに動ける体制にしておかないと。あのわずか数時間の間で、果たして何千人の命が救えていたものか―。無念でなりません。
濱口 この状況は自民党政権下から続いていると思います。今でこそ、中国艦船の日本近海の動向が、防衛省やメディアから発表されるようになりました。しかし実は、自民党政権下でもあったんです。それを官邸が「あまり騒ぎ立てるな」と握りつぶしていた。そういうレベルで危機管理ができるのかと。
今回の東日本大震災への対応は、菅首相ではなく、日本の政治の仕組みそのものを見直す機会にしなければなりません。そして、こういう震災の時期こそ、霞ヶ関の官僚をうまく使わなければならない。今まで、中央から担当の官僚が被災地の県庁に詰めていたのが、今回は行なわれていない。政治家も行っていなかった。それで政治主導なのかと―。
―今回は、地域から国家まで幅広く語っていただきましたが、理想の実現へ向けてどのようなアクションをとっていくべきでしょうか。
松尾 政府は道州制を導入し、地方分権を進めるとの大義名分の下、市町村合併を行なっていますが、それは国の財政が危機的状況だからです。財政だけを考えれば、確かに中核都市をどんどんつくっていくべきです。それを取りまとめる福岡県の体制を整える。政府がいう30万人規模の中核都市を合併でつくっていき、道州制の礎にしたいと考えています。
しかし、合併で行政サービスが不便になるのは目に見えていますから、それに耐えていかなければならない。
―耐えるためのビジョン、拠り所となるものは何でしょうか。
松尾 それはやはり『僕たちの子や孫のために―』という想いです。ただし、九州・福岡を世界に開かれた街にしていけば外貨が入ってきますから、そこで財政が潤ってきます。九州は、アジアへの玄関口という地の利があり、観光、商業、技術の3拍子がそろっていますから。
濱口 これからの国づくり、地方の再生についてきょうの結論を言うと、もう一度、歴史をしっかりと見ていく。そのなかで「ミニ東京」ではなく、江戸時代のような"城下町構想"を持つべきです。昔は、江戸時代は三百の藩があって、それぞれに城下町があり、それぞれ独自の文化、産業を持っていました。それらの積み上げが国力に繋がるのです。
【文・構成:山下 康太】
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