吉田宏前市長から高島宗一郎現市長に体制が変わり、飛躍が期待された福岡市だが、アイランドシティ問題を筆頭にまちづくりという面では課題が山積している。これからの都市開発について、"水と緑と市民の共生"という視点から検証してみたい。今回、このテーマに関して2人に話を聞いた。1人はアクロス福岡などの設計で福岡市とも関係の深い、世界的に有名な建築家の有馬裕之氏。もう1人は、世界で最も古く権威のある「英国チェルシーフラワーショー」で、"世界一の庭師"としての地位を築いたランドスケープアーティストの石原和幸氏。以下、世界の第一線で都市計画・都市景観の策定などに携わっているこの2人の言葉を交えながら、3回に分けて福岡市のまちづくりを考えていく。
福岡市に限らず、日本の大都市というのは総じて"緑"が少ない。近年、ヒートアイランド現象の緩和や美しく潤いのある都市空間の形成の観点から、少しずつ"屋上緑化"や"壁面緑化"などの取り組みが全国的にも行なわれるようになってきたが、都市部において緑が占める割合はまだ圧倒的に少ないのが現状だ。このような都市部の"緑"に対して、"世界一の庭師"である石原氏は次のように提言する。
「今はインターネットの普及で文字通り世界中とつながっており、東京と比べてどうこうではなく、『世界のなかで、福岡のここに行きたい』と思えるようなまちづくりが重要になってきます。私の場合、どうしても"花"ですので、花と緑を"生きた建築素材"として近代的な建物だろうが何だろうが、あらゆるところに取り入れていけば、まちがまた面白く、そして元気になるのではないかと思います。
たとえば、ニューヨークのセントラルパーク。あそこがすごいのは、きちんと生態系が確立していることです。同じような発想が福岡でも行なえれば、非常に面白いのではないでしょうか。そしてやるからには、天神や中洲など人が多いところでやらなければ意味がありません。土地がなければ、縦に庭をつくっていけばいいでしょう。"壁面緑化"ではなく、"縦に庭をつくる"という発想で都市を緑で覆っていき、『森のなかに福岡がある』というような都市づくりができれば、世界に向けてのアドバンテージになります」(石原氏)。
もちろん、都市部をただ緑化すれば良いというわけではない。そこには考えていくべき問題もある。たとえば植生。あまり知られていないが、福岡城の堀には、県指定の天然記念物であるツクシオオガヤツリという植物が自生している。この植物、何と日本ではこの場所でしかきちんとした自生が確認されていないのだが、わずかな数しか生えておらず、環境に神経質で他種との競合にも弱いため、非常に存在が不安定な希少種となっている。
ほかにも、近隣の大濠公園などでの固有種が減っているとの話も聞かれるが、その一因として、観賞用に植えられている外来種の花粉などの影響も挙げられている。「緑化していくことは大事ですが、やみくもに行なえばいいというものでもありません。市が植物の保護や規制も含めた、きちんとしたルールを明確化していくべきでしょう」(石原氏)。
【坂田 憲治】
| (中) ≫
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら