同じように寂しく感じるのが、博多湾へのアプローチだ。湾の外周をなぞるように長く伸びた海ノ中道から志賀島のライン、および湾口部に位置する能古島などにより閉鎖性が高く、"外海"にあたる玄界灘と比べて非常に穏やかな海である。先に述べたように、福岡はこの博多湾を中心に栄えてきた港湾都市である。しかし、港湾都市と呼ぶにはあまりにも博多湾に面するゾーンの魅力に乏しい。
たとえば、2つの旅客ターミナルを有し、福岡の"海の玄関口"とも言える博多ふ頭。ベイサイドプレイス博多や博多ポートタワーなど象徴的な施設はあるものの、すぐ横を通る福岡都市高速道路によって市街地とは景観的に"断絶"されている。そのほか、博多湾の海岸部にはコンテナばかりが立ち並び、これだけ海が近いにも関わらず、百道浜などの一部を除いては市民が海に接しにくいまちづくりとなっている。
「私は福岡出身ではないですが、福岡が好きで住んでいます。しかし、相変わらず"外の目"で見ると、博多湾に対するアプローチのゾーンにまったく何もありません。たとえば、フィンランドのヘルシンキなどにも同様の湾はありますが、そこでは朝に毎日マーケットができ、市民が食事や買い物をしたりするなど、生活の延長線上にきちんと湾が機能しています。福岡市も、もっと『湾』を大きくとらえた拠点づくりをすべきではないでしょうか」(有馬氏)。
以上、都市計画・都市景観のプロである2人の話を交えながら、3回に分けて"水と緑と市民の共生"という視点から福岡市の都市づくりの現状を論じてきた。現状の福岡市においては、水も緑も都市の単なる一要素でしかなく、その価値を十分に活かしきれているとは到底思えない。とくに、港湾都市でありながら湾岸ゾーンの魅力が乏しいのは、致命的な弱点だとも言える。
現在、今後の方向性に注目が集まっている「アイランドシティ」も、博多湾の重要な湾岸ゾーンの一角である。まずは、まだ新たに手を加える余地が十分にある、ポテンシャルの高いこのエリアの構想を明確にすることで、福岡市にさらなる魅力が加わることを期待したい。
【坂田 憲治】
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