ファーストヴィレッジ(株) 代表取締役社長 市村 洋文 氏
<九州・福岡の潜在力>
―九州で経営者倶楽部を立ち上げられたきっかけはありますか。
市村 九州との出会いという点では、私の心の師である、元野村証券の副社長で国際証券の初代社長を務めた故豊田善一さんが開催していた善を施す会、いわゆる「善施会」がきっかけです。KOBE証券の社長時代、豊田さんはKOBE証券の会長でした。KOBE証券の会長・社長というコンビで、KOBE証券を上場企業に引き上げたのですが、豊田さんに「善施会」福岡で、九州電力、三洋信販、ピエトロ、ふくやなど、福岡の成長企業の社長たちと引き合わせていただきました。
まず驚いたのは、福岡の方々の食に対するこだわりです。東京よりも食べ物が断然うまい。稚加榮の辛子明太子、一蘭のラーメンなど、東京では食べられないおいしいものがたくさんあって、福岡には大変興味を持つようになりました。福岡は食がおいしく、人柄がいい。女性はおおらかで、男性は男っぽくて決断が早い。私の気性と合うこともあり、KOBE証券時代にも採用などでよく福岡を訪れていました。
福岡で「ファーストヴィレッジ経営者倶楽部福岡」を立ち上げたいという有志からの申し出があり、昨年9月に正式に旗揚げしました。
―福岡には、スケールが大きい経営者がいません。東京のベンチャー企業で成功してきた方々とは比較にならない気もしますが。
市村 それは資本市場とマッチしているかどうかの問題です。東京には福岡証券取引所ではなく、世界の東京証券取引所がある。孫さんも株式公開時には1年間で5,800億円もの資金を調達しました。東京はそれができるマーケットで、資金を運用する日本企業の本社機能が東京に集まっています。
九州では健康食品や化粧品など、100億円、200億円単位の通信販売ビジネスで伸びている会社がたくさんある。アイデアで、隙間を埋めるのがうまい、というイメージがあります。
―これから成長していくのは、どの分野と捉えていますか。
市村 これから伸びていく業種としては、健康・美容・教育だと思っています。私は略して健・美・教(けんびきょう)と呼んでいます。九州の会社は、これらの分野に強いと思います。教育の分野では北九州予備校が、医学部に特化しているという特徴もありますが、東京駅の真ん中に進出し、学生の数を増やし東京のマーケットを食ってきています。
ラーメンの一蘭でも、味集中カウンターなどアイデアが豊富で、東京では店がオープンすれば長蛇の列となります。本当にうまいもの、本物を出している。細かいサービスなど、よくここまでやっているなと。東京には雑なラーメン屋も多いですから。
―今後、どういうコンサル案件が増えてくるのでしょうか。
市村 アジア進出を目指す企業に対するコンサルティングは多くなってきています。また上場企業で言えば、上場している意味をもう一度問い直すということが重要になりますね。上場しているがゆえに、目先の株価急落を恐れ、リスクが取れなくなってしまいます。これからは非公開化によって競争力を蓄え、再度、世界のどこに上場するかということを目指す企業も増えてくると思います。
【文・構成:山本 剛資】
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<プロフィール>
市村 洋文(いちむら ひろふみ)
1959年、北海道生まれ。立教大学社会学部に入学。在学中に、学生旅行ツアーを企画。年間1,000台のバススキーツアーを企画し、4年間で60億円の売上を上げる。学生起業家の走りである。大学卒業後、野村證券㈱入社。新宿野村ビル支店時代に引き継いだ預かり資産を20億から2,000億に増やすなど手腕を発揮。個人で月間投信販売額500億円、月間手数料収入6億円の記録を打ち立てた。その後、最年少で大森支店長に抜擢される。それから野村證券における本社営業企画部など、超エリートコースを歩む。KOBE証券(株)に専務取締役としてスカウトされ、その後社長として預かり資産1兆4,400億円を集め、KOBE証券を1人当たりの預かり資産で野村證券を抜くまでに成長させた。また、まったくの独立証券でありながら、証券会社リーグテーブルで堂々の第12位(03年度)につけ、06年3月に株式公開を果たした。07年4月よりファーストヴィレッジ(株)で代表取締役社長として、M&Aを中心とした経営コンサルを行なっている。
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