<中国の戦略を見極めよ>
1995年(平成7年)、中国の李鵬元首相はオーストラリアを訪問した際、ハワード オーストラリア元首相との会談で「日本などと言う国は20年後には消えてなくなる」と発言した。4年前には、訪中したキーティング米太平洋司令官に対して、中国の呉勝利海軍司令員が「我々が航空母艦を保有した場合、中国側がハワイを起点にし、太平洋を東西に分割し東側を米国、西側を中国が管理する」ことを提案している。この提案は一個人の考えではなく、中国の長期戦略を示した提案と捉えるべきである。
2007年(平成19年)の米国防総省議会報告は、中国の海洋覇権のスケジュールを次のように分析している。
2000年(平成12年)までに中国本土沿岸海域の防衛体制を確立する。10年(平成22年)までに(九州~沖縄~フィリピン~ボルネオ島)を結ぶ第一次列島線内の制海権を確保する。20年(平成32年)までに(伊豆諸島~小笠原諸島~グァム~サイパン~パプアニューギニア)を結ぶ第二列島線内の制海権を確保する。40年(平成52年)までに米海軍による太平洋、インド洋の独占的支配を阻止し、米海軍と対等に戦える海軍を建設する。
実際に、中国本土沿岸海域の防衛体制はすでに完了している。第一列島線内の制海権の確保は15年(平成27年)頃までずれ込むことはほぼ確実であるが、最終的に、この報告書が分析しているように、40年(平成52年)に中国の海洋覇権の計画が成就した時には、台湾は中国に呑み込まれ、日本のシーレーンは中国の脅威に常にさらされることになる。
そうなれば、日本の命運は中国が握ることになる。中国の野望は、決して夢物語で終わる話ではないということを日本人は認識しておくべきである。
<歴史教訓と日米同盟>
同盟関係は永遠ではない。いかに緊密な国同士であっても、同盟関係を絶対視してはならないというのが国際政治の常識であり歴史が証明している。日本も過去に日英同盟の解消という苦い経験をしている。
他国の軍隊が国内に駐留することは決して好ましいことではないが、日本が自主防衛を選択する意思と覚悟がない以上、沖縄に展開する米軍基地のプレゼンスは中国に対する抑止力となっている。日米同盟は日本の安全保障上必要不可欠なのである。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、現在、テイケイ株式会社常務取締役、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスターを務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、領土問題や日本の城郭についての論文多数。
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