西鉄によるあんくるふじやの子会社化に業界各社は驚きを隠さなかった。「気配がなかった」というのが主な理由だが、M&Aは事前に漏れないのが成功の鉄則。むしろ、後になってみれば双方に相応の理由とメリットがあり「納得できる」という声が多い。あんくるふじやは相応に収益力を有し高い評価を得る一方で後継者問題を抱えていた。一方西鉄は少子高齢化が加速するなかで本業の鉄道分野の将来性に前向きな材料を見つけにくい。新たな事業の柱とりわけ流通業を拡大させることには積極的だ。あんくるふじや側からの呼びかけとされるが、話がまとまるのは自然の流れだろう。
地場小売業者は、はやくからこうした状況を予見していた。消費者の低価格指向が強まるなかで資本力に乏しい地場企業は消耗戦になると不利だ。「生き残りには規模が必要」として、別の企業は「バイイングパワーや資金力、競争力を鑑みると最低でも年商500億が最低ラインではないか」との見解を示し規模拡大をはかってきた。あんくるふじやの売上高は150億円。こうした地場業者のものさしからはふたまわり小さかったことになる。
地場小売業界には100億円前後の企業がいまだ数多く残る。こうした企業が同様の業界展望を持っていれば、さらにこの動きは加速すると見られる。今回の案件は今後の大淘汰時代の到来を予見させるものとなった。
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