福岡は「アジアの玄関口」や「観光都市」を掲げているにも関わらず、いまいち観光客に優しくない。そのひとつにレンタサイクル事業がほとんどないことが挙げられる。京都は周辺の寺社を散策するのに、レンタサイクルが利用されることが多く、事業者は約60に上るという。コンパクトシティをうたう福岡市もレンタサイクルがあれば、観光客の利便性がもっと高まるのではないかと、今年(2011年)5月にスタートしたのが、レンタサイクル福チャリだ。
福チャリは、観光客誘致事業を展開するSOZOXの田中真さんが運営している。事務所は、博多区上川端の冷泉荘内にある。田中さんは、石油会社の営業職で、海外に行くことが多かったことから、観光客誘致事業をしようと、08年にSOZOXを立ち上げた。昨秋、外国人向けのサイクリングツアーを企画しようと、応募者を募ったところ、「自転車がないので、参加したくても参加できない」という声を聞き、レンタサイクル事業を思いついたという。それまでは、外国人向けのツアーを企画したり、多言語ウェブサイトづくりを手がけたりしていて、インターネットとリアルの両方から観光客誘致に取り組んでいたが、最近は、このレンタサイクル事業に注力している。
現在、レンタルできる自転車はクロスバイク4台、普通のママチャリが4台の計8台。1日のレンタル料金は、保険料込みで、それぞれ1,500円と1,200円だ。秋の行楽シーズンに入り、週末ともなると、ほとんど予約でいっぱいになるという。今月は、福岡コンベンションビューローの協力も得て、福岡市内の建築物やアートを散策する自転車ツアーも企画し、ある程度の集客も得られた。
今のところ、利用者は日本人観光客がほとんどで、たまに韓国人の利用もあるという。サラリーマン時代に培った語学力を生かし、英語での応対も可能ということで、ゆくゆくはアジアの観光客にも気軽に利用してもらえる事業になっていければと、今後の展開を語る田中さん。自転車という新しい切り口で、観光都市・福岡を盛り上げたいと話している。
【杉本 尚丈】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら