<シリーズ第22回>
約145万の人口を擁し、九州の経済・交通・文化の中心である政令指定都市・福岡市は、大陸文化の入口としての歴史を持ち、『アジアの玄関口』を自負してきた。今、若き高島宗一郎市長が『アジアのリーダー都市』を掲げているが、海外における福岡市の知名度はいまひとつといった感もある。今回は、日本を代表する建築家として海外でも活躍する有馬裕之氏に福岡市についての意見を求めた。
<都市に関する感性の低下>
福岡市に限らず、「日本の都市計画はこのままでいいの?」と、言いたくなる。20代、30代はまだいい。しかし、50代、60代そして70代は、いまだ日本は先進国という錯覚を持っている気がする。あわせて東京のような大都会がいまだに偉いという意識あるようで、残念で仕方がない。現在の街では若い人たちが本当に楽しむ街になっていない。
(高島市長は)まだ若いから経験不足と、とくに年配の方たちが思っているのではないでしょうか。そんなことは関係ないと思う。いままでの経験あるなしの前に自分が感動し、共感するような街が何なのか、彼が考えきるかどうかがとても重要です。まず、さまざまな目線に立って、いろんな国の都市を見たときに『こんな街っていいな』と思うような感性が都市づくりを担う市長として必要ではないでしょうか。
日本は『ものつくりの国』と揶揄されて高い評価を得てきましたが、同時に、古くから培われたこまやかな感性というのが無くなりつつあると感じます。要因は、明治維新から戦後、大量生産・大量消費のモデルをつくり、高度経済にのって『世界の工場』となり、輸出中心の経済構造となったことにあります。
『大量生産・大量消費』が日本人古来の感性を消失させてしまったと考えている有馬氏。そして今、日本の都市は『メガスラム』といった概念に捕らわれつつあるという。
(つづく)
【文・道山 憲一】
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