経済産業省は、「中小企業の連鎖倒産を防ぐ共済制度」を10月1日から拡充する。2010年の通常国会で成立した改正中小企業倒産防止共済法の完全実施に伴う措置。その概要と改正の内容は下記の通り。
1.共済制度の概要
(1)共済制度は経産省所管の独立行政法人・中小企業基盤整備機構が運営。
(2)取引先の倒産により売掛債権が回収できなくなった加入者に、無利子・無担保・無保証人で共済金を貸し付ける。
(3)「一時貸付け制度」により取引先事業者が倒産していなくても払い込み掛金の範囲内で事業資金の貸付けが受けられる。
(4)主な改正内容
・積み立てた掛け金総額の10倍は変わらないが、貸付限度額を現行の3,200万円から8,000万円に引き上げる。
・私的整理の倒産も共済金貸付の対象に加える。
・返済期間はこれまで一律5年間だったが最大7年まで延長。
・繰り上げ完済した契約者には、手当金を支給する制度を新しく導入する。
(⇒詳細はPDFを参照)
2.共済金貸付の要件
(1)取引先事業者の「倒産」とは、取引先事業者が以下の3点に該当する場合。
<1>破産手続・再生手続・更生手続・特別清算開始の申し立てがされた場合。
<2>手形交換所に参加する金融機関によって取引停止処分を受けた場合。(※1)
<3>私的整理(※2)について、弁護士などから支払停止の通知があった場合。
※1 甚大な災害の発生時に取引先事業者の手形等が「災害による不渡り」と
なった場合を含む。
※2 共済契約者の取引先事業者から売掛金債権などに係る債務の整理の委託を
受けた弁護士又は認定司法書士が共済契約者に対して書面により支払を
停止する旨の通知を行なった場合。
[注意事項]
「夜逃げ」「私的整理(一定条件を満たさないもの)」などは、その事実の発生時点の特定や、事実の確認などが困難なため、「倒産」には含まない。
リーマンショックが起きた2008年度以降、倒産は高水準を続けている。3月21日に発生した東日本大震災や最近の急激な円高により、中小企業の経営は悪化しており、今後も企業倒産は増加が予想されている。貸付限度額の大幅な引き上げは朗報ではあるが、回収困難な売掛債権も高額化しており業績の悪化と返済のダブルパンチを受けることになる。景気回復の兆しが見えないなか、企業には与信管理の徹底が求められている。
【北山 譲】
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